2019.01.24

アジャイル開発を実践するための
組織の作り方

Pivotal Japanのアジャイル開発の取り組み
【 AgileHR day #Sprint05_前編 】

■Speaker情報

Pivotalジャパン株式会社
Pivotal Labsソフトウェアエンジニア
梅原 一造(うめはら・いちぞう) 様

ソフトバンク株式会社
テクノロジーユニット アジャイルデベロップメントセンター
竜田 茂(たつた・しげる)様

■モデレーター
株式会社ギブリー
取締役・CSM(Customer Success Manager)
新田 章太(にった・しょうた)

■イベントレポート概要

2018年10月18日、5回目となる株式会社ギブリー主催による「AgileHR day」が開催されました。

今回は、アジャイル開発を実践するための組織の作り方をメインテーマとし、Pivotal Japanの梅原氏、ソフトバンクの竜田氏をお招きして各社のアジャイル開発の定義やチームビルディング、採用や育成に至るまで幅広い切り口でお話しいただきました。

今回は前編としてPivotal Japanの梅原氏とのトークセッションを中心にイベントの模様をレポートします。

■オープニングトーク:アジャイル開発組織の実現に必要な「開発文化」の理解

新田:はじめまして、ギブリーの新田と申します。ギブリーには2012年に入社して、エンジニアの領域に特化したHRの支援事業を立ち上げました。2014年〜2016年くらいはプロダクトの開発チームの立ち上げに従事したり、今では自社で開発・運用している「track」というプロダクトのカスタマーサクセスを担当したりしています。本日モデレーターを務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

今回のAgileHR dayは「よりエンジニアにとって働きやすい空間」となると「開発文化」の話もするべきじゃないかと考え、今回はアジャイル開発を実践するための組織や文化をどう作るかというテーマで、少し開発分野に寄った話をしていければと思っており、実際にアジャイル開発などの取り組みを実践されている企業様とトークセッションという形でお話をさせていただければと思っています。全体としてはアジャイルの定義から、実践、組織・文化の構築、また人事の方もいらっしゃるので採用や育成の施策までお話できればと思います。

■Pivotal Japan 梅原氏とのトークセッション:アジャイル開発の定義について

トークセッションの前半は、Pivotal Japanのアジャイル開発の取り組みにスポットを当て、アジャイルの定義や実際の開発体制などについて伺いました。

新田:今日はアジャイルの定義、実践、文化、HRという大きく4つの話をしていきたいと思っているんですが、今回は1社ずつ事例を深掘りしてお伺いしたいと思っています。前半は梅原さんにお話いただき、後半は竜田さんにバトンタッチしてお話を伺うという風に進めていきたいと思います。それでは梅原さんお願いします。

梅原氏:よろしくお願いします。Pivotal Japanの梅原一造と申します。私はソフトウェアデベロッパーなので毎日100%開発をしていますよ。バランスチームでアジャイル開発をするために必要なデベロッパーとプロダクトマネージャー、デザイナーとチームを組んで開発していますので、いかにバランスの取れた、コミュニケーションを取れるチームメイトが必要なのかということを実感しています。



新田:ちなみに本日会場にいらっしゃる方でアジャイル開発を実践されている方はどれくらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
結構多いですね、ありがとうございます。結構アジャイルという言葉を聞くと、かんばん手法やスクラムなどの手法がよく挙げられるんですが、Pivotalさんがアジャイルの定義やキーワードとして大事にしているものはなんでしょうか?

梅原氏:一番大きいのは「柔軟性」ですね。柔軟性のある開発。その前提となっているのが、正解がわからないことが多いので、検証しなくちゃいけないということです。色々前提として考えているものがあって、その中で何から作っていけばいいのかわからないので、まずわかっていることから作っていくという形で、少しずつ反復しながら徐々にプロダクトを開発する必要があります。

そのために柔軟性のあるチームの構成も重要ですし、実際のコードも柔軟性があって、いくらでも入れ替えたりリファクタリングをしたりできるように開発しています。

■クライアントとチームを組み、アジャイルの手法を共有

Pivotal Japanでは、クライアントの案件をアジャイルで開発するにあたり、クライアントのエンジニアと自社のエンジニアがチームを組んで開発しているといいます。このような体制を取っている理由や効果について詳しく伺いました。

新田:前提として、Pivotalさんではクライアントの案件をチームで開発されているということですよね?

梅原氏:はい、Pivotalではクライアントとペアを組んでプロダクトを作りながらアジャイルの手法を共有していくというやり方なんですけど、社内にペアステーションというスペースがあって、Pivotalのエンジニアとクライアントのエンジニアがフルタイムでペアを組んで開発を行なっています。

新田:「柔軟性」というキーワードを挙げていただいたんですけど、お客様の柔軟な要求に対応するというイメージでよろしいでしょうか?

梅原氏:そうですね、お客様の要求も当然重要なことですし、実勢にプロダクトを使うユーザーの声も非常に重要なので、そのバランスを取りながら、どこが重要なのかを検証しながら開発していく形です。

新田:実践についての話になるんですけど、お客様と柔軟な開発を進めていくに当たって、御社が重要視している取り組みや施策などについてお伺いできますか?

梅原氏:チームにデベロッパーと別にPMとデザイナーがいるんですけど、チーム内で決断できる権限があることがとても重要だと思います。変化するニーズに臨機応変に対応する必要があるので、その変わってくるニーズの中で何が重要かということをユーザーリサーチとかビジネスの成功例などを話合いながら決めながら徐々に変えていかなければならないんですよ。

Aだと思ってたら本当はBだったとかZだったということが結構あるので、ちょっと変わるたびにステークホルダーや上司の上司まで稟議書が必要だとなるとなかなか進まないんですよね。なのでチーム内で決められる権限がとても重要だと思います。

■リモートではなく出社して開発することの意義

エンジニアのリモートワークを取り入れる企業が多い中、Pivotal Japanでは実際に出社して開発を行うことを重要視しているといいます。その理由を中心にPivotal Japanでの働き方の取り組みについて伺いました。

新田:働き方についてはいかがでしょうか?アジャイル開発を推進する上での取り組みやルールなどはありますか?

梅原氏:大きくいうと2つあります。1つは「サスティナブルペース」と言って、デッドラインに向けて一気に頑張るというよりはプロダクトを長期的に良くしていくためにペースを乱さない開発の仕方を行なっています。開発時間についても9時から18時までできっちり終えるようにしていますし、常に何らかの形でアプリがデプロイされている形を取っているので、「明日ユーザーインタビューがあるからデプロイして」っていう場合でもそこまで大変ではないですね。実際にデプロイされているものがあるので。

もう1つはチーム内でのコミュニケーションです。時間を合わせている理由の1つとして、エンジニア同士もペアを組んで隣同士でコミュニケーションを取るんですけど、PMともプロダクトマネージャーともデザイナーともすぐ隣で簡単にコミュニケーションを取れるようにしています。ちょっとした質問があった時にslackで聞くと5分かかることがすぐ隣なら1秒で帰ってくるので、それがかなり大きいと思います。



新田:ありがとうございます。コミュニケーションを重要視されているとのことですが、基本的には開発メンバーのみなさんが9時から18時まで集まって開発をするスタイルなんでしょうか?

梅原氏:はい、9時前に来ると朝ごはんが出るので、みんなで朝ごはんを食べて雑談をしたりもします。チームの正式なスタンドアップミーティングというのがあるんですけど、昨日は何やって、今日は何をやろう、今何に困っているなどを話すミーティングが9時15分にあって、そこからスタートしています。

新田:それは開発に携わる方はみんなオフィスに来られて毎日行なっているのでしょうか?

梅原氏:はい、そうです。

新田:すごく新鮮に思ったのですが、最近はオンラインでslackなどを使ってリモートで働くことも多くなっていると思います。弊社でもチームメンバーの半分くらいはオフィスにいないんですよ。ただslackはめちゃくちゃ盛り上がってたりします。

最近はオンラインで、働く場所を問わず仕事をされてる方が多いのかなという印象がありますが、その中で働く時間を決めて守っているのが特徴的だなと思いました。やはりチームメンバーが顔を合わせて仕事に取り組むのは効果的なんでしょうか?

梅原氏:効果的ですね。ペアの数なんですけど一番多いのは2ペアの体制で合計4人、ペアが2組ある形態なんですが、そういった場合は毎日交代するんですよね。同じ所にいて、スペースも近いですし、毎日交代することで実際にどういった実装をしてるかという全体を見ることができます。ペアが交代すると、残った人が新しく来た人に「昨日はこんなことをやった」という説明をしてもらえるんで、そこでスキルレベルもアップしますし、全体の知識も広がります。

新田:なるほど、竜田さん、梅原さんのお話で何か気になるところはありますか?

竜田氏:バランスチームというと、クライアントとPivotalさんがペアになってると思うんですけど、Pivotal Labsで勉強して自社に帰った場合どのようにしているんですか?

梅原氏:色んなシナリオがあるんですけど、「戻ってからPivotalの代わりになるペアを見つけてください」っていうことが多いです。戻ってから2人のエンジニアがペアを組んで続けることも可能ですが、Pivotalでやってた同じ方法、同じペースを続けるのであれば新しくPMもデザイナーも含めて社内で新しいチームを作っていただいてます。



竜田氏:なるほど、後で話すんですけど、僕たちはスクラムをベースにやっていて、スクラムだとPM的な存在としてスクラムマスターとプロダクトオーナーというロールがあると思うんですけど、PivotalさんのPMは両方やるんですか?

梅原氏:私の認識ではスクラムマスターがタスクの管理などをされていると思うんですけど、そういった実装のストーリーを作る役割もありますし、プロダクトオーナーやビジネスサイドの色々なニーズなどを把握して橋渡しをやるような役割も両方担っています。

■会場からの質疑応答

AgileHR dayでは「sli.do」を使用してリアルタイムで会場からの質問を受け付けています。今回も会場から多数の質問が寄せられましたので、その一部をご紹介します。

新田:会場から「sli.do」で挙がっている質問を取り上げてみたいと思います。『チームにはどれくらい権限が与えられていますか?ある程度金額的な裁量もありますか?』という質問があるのですが、こちらいかがでしょうか?

梅原氏:エンジニアとしては基本的に縛りはないんですけど、クライアント側でどの言語で開発したいとかどういうインフラがあるということは決まってることが多いです。

新田:言語的には決まりがあることが多いと。権限として与えられる領域というのはどういったものがありますか?

梅原氏:プロダクトを作ることにあたっては基本的にすべての権限を与えてもらえるのが理想ですね。権限を与えてもらうことの不安もあると思うんですが、実際にお客様とペアを組んでいてチームメンバーの半分はクライアントの方なので、チームとしてイコールで決めますから、もちろんPivotal側からこうしようと提案する場合もあります。

新田:お客様とワンチームで進めて行くので裁量が許されるというところもあるんですね。

梅原氏:はい、チームで決めていくんですけど、クライアントの方が「こうしたいけど誰々の許可をもらわなくちゃいけない」ってなると時間がかかるじゃないですか。そうなるとプロセスがどうしても遅くなってしまいますね。

新田:こちらに関してもう1件『PMは常勤ですか?仕事がないような...』という質問を取り上げたいと思うんですが、PMの方はどのような働き方をされるケースが多いんですか?

梅原氏:PMはめちゃくちゃ忙しいと思いますよ。1つは何を実装しなくちゃいけないかをデザイナーと話して決めていきます。それをストーリーというんですけど、「Pivotal Tracker」というツールを使っていてそこに書いていきます。

ユーザーのニーズとビジネスのニーズとを合わせて優先順位を付けていく、それがPMの仕事ですし、エンジニアがその各ストーリーについてどれだけ複雑かっていう評価をするんですけど、デベロッパーがインプリした後に受け入れテストをするのもPMですし、ビジネス側のステークホルダーと話して「こういうものを作ってます」っていうコミュニケーションも必要になります。

かなり忙しい仕事だと思うんですけど、たまにめちゃくちゃ忙しい時とそうでない時の差はあるような気はします。デベロッパーは8時間ずっと同じペースで開発を続けていくのに対して、PMはどうしてもプロダクトの段階によってニーズが変わってきますので。

新田:基本的には初期の段階や要件定義でコミュニケーション量が必要だったりするのかと思いますが。

梅原氏:お客様とのコミュニケーションの比率と、実際にどのような機能を作るかっていうストーリーに落とす時間の比率が、プロジェクトのタイミングによって変わってくるのだと思います。



新田:ありがとうございます。最後のテーマに進みたいと思うのですが、エンジニアの採用も実施されていると思いますが、HRの取り組みとして気を配られていることや実践されていることはありますか?

梅原氏:まずは開発のスタイルを全面的に伝えてコミュニケーションしているので、応募して来られる方は「こういった開発をするところなんだな」ということは理解して来られていることが多いです。

もう1つはコミュニケーションの話になるんですが、ペアプロって最初は結構疲れるんですね。すぐ隣にエンジニアがいて話しながら開発するので、技術力だけじゃないんですよね。エンジニアには誰でも得意なことと不得意なことがあるんですが、不得意な部分もすぐにメンバーに知られてしまうので、わからないことが弱みだと思ってる方だと馴染みにくいかと思います。

知らないことはこれからみんなで勉強して、わからないことだらけだけどみんなで少しずつ積み重ねて勉強していくぞっていうスタイルなので。採用前にはそのスタイルに合うように実際に半日ここに来てもらって、一緒にプロジェクトでペアを組んで仕事をしてもらいます。

新田:最後に面白い質問があったので取り上げたいんですが、『エンジニアさんは時間通りに出社しますか?』と質問があります。実際はいかがでしょうか?

梅原氏:意外かもしれませんがきちんと出社しています。本当に18時きっかりに終わるので、18時10分に作業していると怒られるような空気なんです。よって朝もしっかり来なくちゃという文化になっていますね。

新田:ありがとうございます。

後編ではソフトバンクの竜田氏とのトークセッションの内容をレポートします。

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  • Writer
  • AgileHR magazine編集部
  • エンジニアと人事が共に手を取り合ってHRを考える文化を作りたい。その為のきっかけやヒントとなる発信し続けて新しい価値を創出すべく、日々コンテンツづくりに邁進している。

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