2020.05.20

「今、求められる
エンジニアの採用」について
CTOが経営視点から語る

〜ビズリーチ×ギブリーの
両CTOによるトークセッション〜
【AgileHR day #Sprint10】

■Speaker 情報

株式会社ビズリーチ
取締役 CTO 兼 CPO
竹内 真(たけうち・しん)様

株式会社ギブリー
取締役CTO
池田 秀行(いけだ・ひでゆき)

■Moderator 情報

株式会社ギブリー
執行役員
山根 淳平(やまね・じゅんぺい)

■イベントレポート概要

経営とエンジニアリング両方の視点を持つCTOたちが考える“求めるエンジニア像“とは?をテーマに、株式会社ビズリーチ取締役CTO兼CPOの竹内様をお招きして、株式会社ギブリー取締役CTO池田とのトークセッションの模様をお伝えします。

■今、求められるエンジニア像とは

山根:本日はモデレーターとして山根が進行させていただきます。さて、CTOトークセッションということで、「今、求められるエンジニアの採用をCTOが語る」というテーマでお話を伺っていこうと思います。まずはお二方に簡単な自己紹介をお願いしましょう。

竹内氏:私は、ビズリーチの立ち上げ期に助っ人のような形でジョインして、11年くらい在籍しています。池田さんも前職ではCEOとして会社経営をされていたと伺ってますが、僕もどちらかというとCTOよりもビジネス側に立っていることが多いんです。ただ、小学5年生から30年くらいずっとソフトウェアの開発やプログラミングに携わってきたので、こういう立場になったというところでしょうか。

池田:竹内さんの経歴を伺うと、私とよく似ているなと思いました。2001年に社会人になって、私もSIerとしてソフトウェアを作っていました。ちょうどWEB2.0が流行った2007年頃にグループスという会社、当時はGMSという社名でしたが、そこに一人目のエンジニアとしてジョインしました。当時はSNSを作ったりしていましたが、時代の流れとともに事業をソーシャルゲームにシフトしてから社員が100倍に増えるくらい急成長しました。立場としてはCTOとして5年、CEOとCTOの兼務を5年の計10年在籍していました。そして、2年前くらいから株式会社ギブリーにジョインしました。ギブリー20人弱のエンジニアチームなので、CTOという肩書きはありますが、何でも屋のようなことをやっています。CTO職って会社のステージやフェーズによって役割は様々ですが、振り返ると私もビジネス寄りのCTOですね。

山根:ありがとうございます。それでは、経営視点と技術視点を併せ持つお二方に今回のテーマについてお話を伺っていきましょう。早速ですが、今の世の中や会社で求められているエンジニア像ってどんな方だと思われますか?

池田:そうですね、我々はHRtech領域のSaaSモデルのサービスを手がけていますが、この領域のサービスはここ数年で大分増えてきましたね。そんな中でお客様に選ばれるサービスを開発・運用していくには、エンジニアも「サービス志向」であったり、「お客様の課題感を捉える視点」が求められます。
もちろん、エンジニアとして技術を磨くことは大前提ですが、それに加えて何かしらの得意領域を持っていることは重要ですね。ギブリーでもそんな人を増やしていきたいと考えています。

竹内氏:日本では、開発会社に受託する文化が発展して、作るというところが分業化されちゃっているんですよ。どんなプロダクトが最終的な目標なのかということよりも、それは別の人が考えてただ単に作るというケースも多くあるんですよ。

しかし、事業会社では、どういうサービスやシステムで、何を目的とするのか。エクスペリエンスはこれで正しいのかというのを自らに問いかける人材が絶対に必要です。サービスに向いているエンジニアなのか、作るだけのエンジニアなのか。前者と後者では開発のスピードやコストに圧倒的な差が生じます。全員が全員、前者の人材を採用することは現実的には難しいので、1つのプロジェクトに数人は欲しいと思います。

山根:そういった意味では、エンジニアという肩書きの定義が広いですね。求められる範囲が増えている印象を受けますね。

竹内氏:どうなんでしょうね。経営者をやっていても、財務諸表の話も税務も労務も民法もある程度わかっていないと、判断できないこともあるので、弁護士ほどじゃないけど法務のこともある程度知らないとならないと考えると、エンジニアも技術面以外に全体を補完するスキルは必要かと思います。

たとえばアメリカとかだと、学部でコンピュータサイエンスを学んで、そのあとMBAに行くとか聞いたりしますが、日本にはそういうエンジニアが少ないように思います。理系と文系でバチっと分けられる教育では、両方手に入れる選択肢が顕在化しづらいのかもしれないですね。

■求めるエンジニア採用について

山根:今後、そういったエンジニアが求められるということになったとき、採用はけっこう難しくなってくると思いますが、お二方はいかがでしょうか。

池田:競争率が高い状態なのでエンジニアの採用には苦労しています。10年前に比べると、インターネット系の会社は明らかに増えています。サービス志向のエンジニアだったりプロダクト志向のエンジニアだったりを求める傾向はどんどん強くなって来ています。自社に応募が来るのをただ待っているだけでは、どうにもなりません。

山根:お二人の会社には海外出身のエンジニアも多いと思います。売り手市場の国内のエンジニアだけでなく、最近は海外のエンジニアにも注目しているのでしょうか。

竹内氏:日本だけでの採用では難しいので海外に目を向けるということはありますね。ビズリーチ自体は3、4年前くらいから香港エンジニアの採用をやっていますが、彼らは英語と中国語が話せて、その上、日本語を話せる人もいます。
しかし、彼らの視点に立ってみると、テクノロジーを活用する会社で働きたいと思った場合、現地では金融業界が中心になるのが現実。
そうなると、欧米が候補となるのですが、ヨーロッパはビジネスの環境としてスタートアップが少なくて、アメリカはビザの受給が難しいという事情があるんですよね。そういう背景もあって、香港の学生は日本での就職も選択肢に入ってくるのです。欧米で学んだ香港の学生の中にも、日本行きを選択する人は少なくありません。

山根:海外の人材が日本にやって来るきっかけはあると。

竹内氏:きっかけはあると思います。ですが、日本の働き方に対するネガティブなイメージも持っています。例えば、海外から日本にインターンシップに来た学生の話を聞くと、ほとんどの人が「サービス残業が多そう」「組織の中の一部に染まらないといけない」「飲み会が多い」という共通の印象を持っています。グローバルでも共通している日本の印象です。特に飲み会に関しては、独立した個人として行きたかったら行くし、行きたくなかったら行かないという自由を尊重することは重要だと思います。

山根:外国人を採用すると、ダイバーシティのある組織をどう作るかが重要になると思います。そこにも力を入れているのですか。

竹内氏:そのスイス人は英語とフランス語とドイツ語と日本語が話せて、最近では中国語もしゃべれるようになりました。

日本は世界で稀に見る本当に特殊な国なのです。「空気を読む」という常識があるくらいですから。弊社では外国人材に対してそのスイス人が1on1をしてくれていて、日々の生活や業務での悩みをヒアリングしています。

山根:ギブリーではどうですか、池田さん。

池田:竹内さんの話を聞くと、そうとう苦労されたんだなということが滲み出てきましたけど、実はギブリーは10年ほどの開発チームとはいえ、グローバル比率は5割くらいで、開発は英語でやっていたりするんです。竹内さんのお話でエンジニアのマネージャーはアジア人ではないほうがいいとのことでしたが、弊社では西洋人もアジア人もいたりします。

ただ、先ほどの日本には空気を読めという文化があるということでは、それをヒシヒシと感じることがあります。逆に言うと、ちゃんと物事を整理して伝えないと動いてくれないということがありますし、説明責任を求めてくるので、それに対してしっかりドキュメント化する、しっかりコミュニケーションするようにしています。日本人を採用するより、海外の人材を受け入れるほうが難易度が下がったりする部分もあるので、そういう意味ではうまく回っていると思いますね。

山根:それって具体的にアトラクトはあったりするのですか?

池田:私個人で意識するのは、WHYを伝えるということですね。いまの弊社のステージであればプロダクトにどれだけ共感してもらえるか、我々は何故これをやって、何を変えようとしているのかを伝えることに意識していますね。

山根:両者とも日本と海外のエンジニアが社内にけっこういらっしゃるというところだと思うんですけど、ビズリーチさんは最近、グローバルスタンダード採用というか、日本人も海外の方も変わらずに、同じスキルを見極めます、同じ評価をしますよということをやられているかと思うのですが、そういった同じ基準で採用していこうというのは具体的にどういうことをされているのでしょうか。

竹内氏:弊社では海外と国内を完全に分離していた時期があったのですが、グローバル側に寄せる形で統一してきました。

例えば、スクラムで開発を行うとき、スキルの高いエンジニアだけで構成されているチームのほうが(人数は少なくても)生産性は圧倒的に高くなります。結局は下限をどう高くするかによって、チームのパフォーマンスは決定づけられるのです。だから、レベルの高いエンジニアを採用したい。しかし、日本国内だけでは集められません。年収を2000万円、3000万円に上げても採用できる人数は限られています。ところがグローバルなマーケットを見ると、求める要件に合う人材はいるのです。弊社では採用基準を上げ、新卒エンジニアの年収は600万円を下限としました。課題は、採用基準を上げたことでグローバルでは採用ができる半面、日本人の比率が思ったよりも上がらないことです。本来は半々くらいにしたいのですが。

山根:生産性を高めるために基準を上げていかないといけないということでしょうか?

竹内氏:上げていかなきゃいけないというわけではないんですけど、理想的なチームを作ろうと思うと、どこかでそれをやらなければならないんですよ。
また、このような環境ですので、弊社のエンジニアは英語の学習をする比率が非常に高くなっています。

池田:日本人のエンジニアでも英語能力を高めると海外の論文とかも読めるので、入ってくる情報が全然違いますよね。日本のエンジニアって日本語訳されているものから情報をインプットしている人も多いですしね。

山根:そういう優秀なエンジニアって、なかなか見極めが難しかったりとか、面接だけだとコミュニケーション能力とか、過去に何をやっていたのかというだけだと見極められないポイントがあると思うんですが。そこのスクリーニングって、何か検証をやられていることってあるのでしょうか。

池田:我々はtrackというプログラミングスキルを見極めるツールを開発しているのですが、自社でも当然使っていて、海外の人材は日本人のように職務経歴書がしっかりしているわけでもないので、まずはどれくらいコードが書けるのかを見るために受けてもらっています。

竹内氏:ウチは面白くて、コーディングテストを2回やっているんですよ。WEBでのコーディングテストと、リアルでのコーディングテストです。ホワイトボードや紙に書いてもらって、そういったことをやっています。コーディングテストというのは、どんな手段を使ったとしても問いに対して答える力があるかないかを試すというもので、カンニングしようが何しようがとにかく答えを出すと。それすらできない人は、お断りしています。

■CTOの立場から人事に求めることと、理想な関係性について

山根:それでは最後の質問となりますが、技術トップとして、今後人事に求めることをお伺いしたいと思います。人事としては、エンジニアの協力なくしてエンジニアの採用はないということですが、CTOという立場から人事に求めること、ないしは今後あるべき関係性を聞いてみたいと思います。

池田:人事から見ると、エンジニアはいちばん難しい職種だと思います。また、エンジニアが話すテクノロジーの話題は、人事にとっては苦手分野なのではないかと勝手に思っています。それでも、現場のエンジニアが一緒に働く人を自分で選びたいと言ったら、人事とタッグを組んで一緒にやるしかないと思います。インターネット系のサービスを提供する会社が投資するものと言ったら、人しかないのです。人の成長、もしくは人のボリュームが、事業の成長にダイレクトにつながるという意味では、それは避けては通れません。経営課題としてもプライオリティが高いものです。

したがって、そこに対してはCTOも人事も、どれだけ協力して一丸となって採用できるかということに尽きると思います。また、人事がエンジニアを巻き込むときには、途中からコミットを求めるよりも、要件定義から加わってもらうほうがエンジニアとしてはやりがいを感じます。人事には、そのあたりに気を配って巻き込んでもらえるとありがたいと思います。

竹内氏:良いエンジニアは、コンピュータと向かい合う時間が長く、コミュニケーションのテクニックだけを見てしまうと本質を見失います。表現している言葉の1つ1つよりも、どういう気持ちで、何を求めて生きているのかということを掘り出してほしいと思います。人事の方のほうが会話は得意でしょうから、できるはずです。その人自身の人間性も含めて見ていただきたいと思います。営業の採用ではビヘイビア(振る舞い)を見ることが多いですが、エンジニアの場合はもっとインサイトを見るような気持ちを持ってほしいですね。

山根:お二方、本当にありがとうございました。

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  • Writer
  • AgileHR magazine編集部
  • エンジニアと人事が共に手を取り合ってHRを考える文化を作りたい。その為のきっかけやヒントとなる発信し続けて新しい価値を創出すべく、日々コンテンツづくりに邁進している。

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