2019.04.09

KDDI株式会社と
コニカミノルタ株式会社が考える、
DX人財の
採用・育成の取り組みについて

DX時代のエンジニア組織づくりとは?
【AgileHR day #Sprint07】

■Speaker 情報

KDDI株式会社
プラットフォーム事業本部
アジャイル開発センター
アジャイル開発4 グループリーダー
岡澤克暢(おかざわ・よしのぶ)様

コニカミノルタ株式会社
IoTサービスプラットフォーム開発統括部
サービス開発部 担当部長
吉田明子(よしだ・あきこ)様

■Moderator 情報

株式会社ギブリー
取締役・CSM
新田章大(にった・しょうた)

■イベントレポート概要

7回目の開催となった「AgileHR day」は、近年注目されているデジタルトランスフォーメーション(DX)時代のエンジニア組織をテーマに、革新的な“DX人財”の採用・育成に関わる、KDDI株式会社の岡澤克暢(おかざわ・よしのぶ)氏、コニカミノルタ株式会社の吉田明子(よしだ・あきこ)氏をスピーカーにお招きし、DXの考え方に基づいたアジャイル開発組織の立ち上げノウハウや、マネジメント層への理解・協力を得る手法、そしてDX人財の確保や成長を促す取り組みなどについてお話しいただきました。

■オープニングトーク:エンジニア組織に必要な「デジタルトランスフォーメーション

新田:今回のテーマは「デジタルトランスフォーメンション(DX)時代に求められる、これからのエンジニア組織カルチャー」ということで、KDDIの岡澤様とコニカミノルタの吉田様にご登壇いただき、その取り組みについて、ざっくばらんにお話いただく予定になっています。打ち合わせの段階で非常に濃い内容になっており、皆さんにはたくさん有益なものをお持ち帰りいただけるんじゃないかと考えています。ぜひ、お楽しみいただければと思います。



最近、いろいろなところで「DX」を耳にする機会が多いと思いますが、なぜ今DXが注目されて、なぜ必要とされているのか?について簡単に説明いたします。

DXとは、もともとスウェーデンの大学教授が発表した“人々の生活にフォーカスを当てた”論文の中で、デジタルトランスフォーメーションという言葉を引用したのが起源とされています。日本国内の企業におけるDXにおいては、IDCジャパンがIoTを活用した人々の生活を豊かにする製品を、もっと世の中に売り出していこう。そういう第3のプラットフォームを活用して、新しいデジタル技術を活用することで、製品にファクトするビジネスモデルを創造していこうという考え方が、企業活動におけるDXだと解釈して、近年引用されたりしています。

また、マイクロソフトとIDCジャパンが共同でリサーチした結果によると、2021年には約50%の製品が先述したデジタルサービスから生み出されてくるのではないかと予測しています。DXは非常にマーケットや経済に対してインパクトがあるものだと言われています。

企業のDXに何が必要かというと、まず、ひとつ目がビジネスとして、新しいプラットフォームで製品を提供していくということ。これは経営戦略が非常に重要になります。従来のプラットフォームはデバイスだったり、インストール型ソフトウェアだったりしたのですが、いまはいろいろな人がモバイルを使ったクラウドの環境で、さまざまな生活を創造しています。そんな中、よりビジネスモデルを製品にフィットさせていこうということがDXの考え方です。たとえばクラウド型のサーバーというビジネスモデルが生まれたりというように、よりビジネスモデルを変えていく必要があるということなのです。

さらに、その製品を生み出すためには組織マネジメントが重要になってきます。要するにエンジニアだけじゃなく、仕事に関わるいろいろな社員がITの重要性を理解したり、新しいビジネスモデルにおけるルールを把握していくというのがマネジメントの重要性と言われています。まさに今日「アジャイル」というテーマで具体的なお話をさせていただきますが、新しいDXということで言えば情報プロセス自体、もっといままでと違った取り組みが必要となってきます。

そもそも新しいデジタルサービスと言われても、そのビジョンの展開がなかなか追いついていないのが現状です。たとえば、これまで会社の中で運用してきた老朽化しているシステムを運用し続けなければならない。しかし、そこから脱却することが難しく、実際に会社の予算の90%以上をシステム運用に当てる企業が40%以上もあると言われています。



日本企業がアメリカの企業と比較して、新しいビジネスが生まれにくいと言われています。その原因は、いわゆるIT人材であるエンジニア上がりのプロダクトマネージャーといった人たちやIT開発チームが製品開発に関わることがほとんどないことです。日本の大手企業では20%くらいと言われており、これがアメリカでは70%くらいが内製するチームを持っているという差があります。つまり、エンジニア人材が足りていない課題があると言われているのです。

それでは、実際にこのような状況にある中で、どのようにDXの考え方に基づく組織づくりを始めていくべきなのかというのが今日のテーマです。具体的な取り組みをしているお二方に、いろいろなお話を伺っていこうと思います。

一般的に言われていることに、既存事業に関しては変えられない、運用し続けなければならない。新しい製品開発を行うチームは組織の中で小さく生み出し、そこから大きくしていくべきだというものがあります。最初は組織の中で少人数のチームを組んで、たくさんやらなければならないプロセスを小さく始める。そこから事業化していって、最終的には会社全体に文化を浸透させていったり、組織全体を変えていく取り組みを始めている企業が増えています。

■アジャイル組織を立ち上げるためにはマネジメント層を巻き込むことが重要

新田:それでは、さっそくトークセッションを始めさせていただき、実際に大手企業の中でDXをどのようなプロセスで改革をして、どのように組織づくりを体現していったのかをお話いただきたいと思います。まずは、お二方の自己紹介から。

岡澤氏:私はアジャイル開発センターという開発グループに所属しています。現在の主な役割は開発マネージャーです。アジャイル開発という観点では「スクラム」という手法があり、複数のプロジェクトをスクラムで実施しています。スクラムマスターなども実施してきました。これまで何をやってきたかというと、前職ではSIerをやっており、Webのシステム開発や企画を担当していました。10年くらい前、モバイル&クラウドをやりたいと思ってKDDIに転職しました。それからシリコンバレーのベンチャー企業とサービス開発したりしてきたり、現在は、HomeIoTサービスの“auHOME”を開発しております。



吉田氏:私はIoTサービスプラットフォーム開発統括部という、バズワードを拾って繋げたら所属名ができ上がるような部署におります(笑)。自身の経歴としては、大学でコンピュータサイエンス専攻の学部生をやりながらスタートアップに所属し、そのあと大学院に行きながら、アメリカ農務省の開発プロジェクトに参画しました。そして大手電機メーカーの研究所に勤めて、開発戦略の策定とソフトウェアの開発部長を歴任したのち、現職に就いています。いまは、新規事業推進のための開発体制を作ったり、また、自分たちだけで何でもやるというのは限界があるため外部のアライアンスやパートナーシップ発掘の推進、本日の話題でもあるDXによる事業貢献を目指した開発支援チームのリードなどをしています。



新田:お二方とも開発にバックヤードがあるという感じですね。ちなみに、これから深い話をする上で前提としてお知らせしておきたいのですが、今日会場にいらっしゃった皆さんは、エンジニアよりの方が比較的多いということで、そのあたりも踏まえていろいろなディスカッションができればと思っています。それではお二方に、DXの定義について簡単にご説明いただければと思います。まずは岡澤さんから。

岡澤氏:まずは、ICTを活用してビジネスを大きく変化もしくは成長させていくもの。これは開発チームにとって重要で、これからのビジネスは最新の技術を活用し、新しい価値をIT主導で進んでいくということを意味しています。個人としては2011年ごろ、シリコンバレーの開発チームと一緒に開発をしておりましたが、(日本とは)明らかに開発スピードや手法、流れが違っていて、このままだと難しいなと感じていました。

DXで重要なのは、価値あるものをお客様に提供していくことです。KDDIでは「本業貢献」といって、お客様のビジネスに全力で貢献していくことを目指して、お客様と一緒にビジネス変革を実施しようとしております。(DXの)アジャイル開発の取り組みとしては、最初は社内から始まったのですが、社外に対しても新規ビジネスを共創するための新たな施設として2018年9月に「KDDI DIGITAL GATE」を設立しています。

吉田氏:皆さんご存知のとおり、今日のテーマであるDXは目的ではなく手段です。弊社は現在まで140年続いてきたメーカーですが、メーカーなりの強みを捨てようとしているのではなく、いま持っている強みにIT技術を掛け合わせることをDXと定義しています。ただ、DXは手段の話であって、それで何をするかというのが重要ですね。弊社はこれまで、モノを作って売るのが事業の主流でした。モノを作ってお売りするという形態の企業から、社会課題を解決するためのソリューションをお客さまへ提供する「課題提起型デジタルカンパニー」に変わっていくことを、全社方針として目指しています。

弊社が解決したい社会課題とは、たとえば医療や介護需要の問題、労働力不足やミスマッチの問題、都市・インフラのセキュリティに対する不安感、資源やエネルギー不足の問題など。こういった社会課題を解決するすべを、皆さまにご提供したいという方針です。



新田:とかくDXだったり、アジャイル開発という情報が先行しがちですが、それを実践していく上で重要なのは価値をお客様に素早くデリバリーしていく。それが商品や「事」みたいな形で提供していくということですね。それでは、いまお話していたことを軸に、どのように展開しているのか。具体的に、どのように社内でチームを立ち上げてやっているのか。DXを実践するためにアジャイルの組織をどのように作っているのかについて、ご説明いただけますか。

岡澤氏:2013年ごろからアジャイル開発を推進しようと小さなプロジェクトから始めました。2018年9月に外部向けに社内で培ったものを提供していこうとしています。そのあたりは、以下の動画を見ていただいたほうがわかりやすいと思います。



いま動画でいちばんよくしゃべっていた人が山根さんという方で、アジャイル立ち上げ当初、スクラムでいうPOで、私がスクラムマスターでした。いまは山根さんがDIGITAL GATEのGATE長になっています。企画開発と試行錯誤してゼロから立ち上げていますので、山根さんに相談すれば何でも解決してくれると思います(何でもは言い過ぎですね)。また、開発サイドとしては社内にエンジニアが少ない。日本の大手ユーザー企業で社内にエンジニアがいるという会社はあまりないですね。そこをどうしていくかが課題です。

いま振り返ると、企業に「マネジメント層の理解」がないと、物事が進んでいかないということです。当たり前ですね。次に大切なのは「アジャイル開発の理解と習得」。あとは内製です。エンジニアを社内でどうやって育てていくかというのが重要でした。そのために重視したのが「アジャイル」「リーン」「デザインシンキング」。この3つを軸に進めてきました。



新田:いちばん最初の立ち上げというのは、やはりマネジメント層の理解というか、提案から入るものなのですか?

岡澤氏:そうですね。実際、数名から始まりましたが、トップダウンというやり方もあるんですが、日本企業ではなかなかそういうやり方では動かないところがありまして。KDDIの場合、いちばん最初にエンジニア数名とマネジメント層の人間で小さいチームを作り、徐々に始めていくスタイルで社内に広げていきました。ちなみに、現在は20チームくらいできあがっていて、2013年に数名だったものが、いまでは200名のアジャイル組織になっています。

新田:立ち上げのときに、どういったことから始めたのですか?

岡澤氏:初期メンバーもシステム設計やプログラミングを専門としてきた人材というわけではありませんでしたので、外部から招き入れたエンジニアの力も借りて、開発自体と並行して育成しながらアジャイル開発を進めました。

新田:いまの動画で、外部の方とのコラボレーションでお客様と一緒にやっていくときに、自社の製品を開発するというのであればスモールにアジャイル開発ってスタートしやすいかもしれませんが、お客様に対してアジャイルを提供するのは、けっこう難しいのではないのかなと思うのですが、そのあたりはどうやって工夫されていますか。



岡澤氏:アジャイル開発というと、開発だけに目線が行くんですが、先ほど申し上げたようにデザインシンキングとリーンとアジャイルが重要です。デザインシンキングは何かといえば「0→1を作る」ということです。リーンはイメージ的に1→10→100へ増やしていく。その横軸にアジャイルがある。アジャイル開発で言えば、お客様と会話して開発だけ入っていくということであれば、もともとの受発注の関係と同じですよね。われわれは、お客様の課題や価値を一緒に探していく。デザインシンキングのところから一緒にビジネスをやっていきましょうという形です。

新田:やっぱりリソースとしてとか、開発を請け負うという形ではなく、最初に課題を見つけて、それから寄り添っていくことが重要になるんですね。

岡澤氏:そうですね。一緒にやっていくお客様のチームも育てるということもやったりしています。チームに何人か入ってもらって、一緒にスクラム開発を実施して、育っていったら自社にてチーム開発をリードしてもらうということになります。

新田:ちなみに岡澤さんからマネジメント層の理解がいちばん重要というお話がありましたが、コニカミノルタさんの場合は、そういった課題感はけっこうあったりしますか?

吉田氏:長い歴史を持つ弊社のような製造業の企業において、これまでの主流である開発スタイルと比較すると、アジャイル開発は新しい考え方であり、これまで主流であった開発スタイル・考え方とは真逆となる部分が多いです。アジャイル型開発という思想の理解、啓蒙、浸透という点において、マイナスからのスタートと言っても良いでしょう。それでもやっぱり、組織に影響力を持つマネジメント層を巻き込んでいかないと、全体としては動かないし組織内でスケールアウトしにくいので、簡単ではないが非常に重要なポイントです。

経営層の中に、新しいものに対して、なんとなく面白そうだという嗅覚を持っているタイプの人は必ずいます。そういう人をまず見つけ、全力で経営層やマネジメント層を巻き込んでいくのが大事と思います。もちろん「草の根運動」的にやっていくのも大事なんですけど、それだけでは大きな組織の中でスケールアウトさせるのに時間がかかってしまいますので。社内に発信力のある人を見つけに行き、その人にアジャイル開発の本質を理解してもらう。「なんかこれ面白いんじゃないか」というセンスを持っていて、共感してくれる人をつかまえに行くということですね。



新田:岡澤さんも、こういう活動をけっこうされたんですか?

岡澤氏:はい。先ほど申したリーンやアジャイルを理解している方がマネジメント層に数人は必ずいることが必要だと思っていて、現在のアジャイル開発チームを組織できたのはマネジメント層の方々が頑張ってくれたというイメージが本当にありますね。弊社では新宿に開発センターを持っていて、そこにアジャイル開発オフィスを作ったんですが、そこを経営層の方に現場を見に来てもらうといったことは、やっていました。

吉田氏:われわれの場合はアジャイル推進センターみたいな組織にはなっていないのですが、横断的なスクラムチームで推進しているプロジェクトがあちこちにあります。そういう人たちが社内のあちこちにいるけど互いにうまく繋がっていないという状態ではもったいないのでアジャイル推進ワーキンググループという「場」を通じて、たとえば年に1回のアジャイルナレッジ共有会や、日々社内SNSを活用したりしつつ、またさきほどのお話のようにトップ層を巻き込んだり外部の有識者を招いたりといった活動も含め、社内を動かしにいっていますね。これについては、弊社の中原という者が数年前から活動しておりまして、「コニカミノルタ 中原」で検索していただくと弊社内での活動に関する資料や記事が見つかりますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。

■エンジニアが開発のことだけを見ている時代ではない

新田:アジャイル開発とか、そういう言葉を聞くと、エンジニアの人たちがやることと思われがちなんですが、実際にやっているのは事業部横断でいろいろな人たちなんですね。そういう人を巻き込んで、ひとつのチームで同じゴールを共有する。そのあたりの横断的な取り組みというのは、KDDIさんではいかがですか?

岡澤氏:私のいる部署はアジャイル開発センターというのですが、実際のところ、企画や品質管理、開発部門等で仮想でメンバーを組んでいるんです。センターにはエンジニアリングするチームがあるのですが、そこに企画部門のメンバーが来て一緒に開発するというような感じです。

新田:いろいろな人たちが同じ方向に向かって仕事をすると良かったことや、こんな効果があったということはありますか?

岡澤氏:そもそも開発の人間が開発のことだけを見ていたらいけないんです。もっとデザインシンキングとか、そういうところを見ないと具体化しません。弊社では、いまアジャイル組織が何チームかありますが、たとえばひとつのチームは、週に1回、製品を作ってくるのですが、次の1週間で何を作ろうという話になったとき、これまでだったら企画が作るように言ったものを作るという感じでした。いまはチームでやっているので、企画メンバーがこういうものを作ろうと言ったときに、それはお客様に価値があるかどうか議論をエンジニアが一緒にできます。チーム全体でサービスを作っていくという考え方なんです。

新田:1週間に1つ何かを作っていくというサイクルによって、なにか良さというものはありますか?

岡澤氏:それは皆さんが感じていますよ。たとえばスマホアプリやWebサービスに何か改善要望があったとき、修正が3か月後ですよというのはユーザーとしてどう感じますか? 残念ですよね。改善要望は1週間ぐらいで直っているという、お客様に価値を早く届けられるのはメリットですね。

新田:マネジャー層の方も、そういうのを見て安心したり、面白いものができているという認識を、モノで示すということがあるんですね。

岡澤氏:モノで示していくというのはとても重要で、やっぱりパワーポイントに書いてあるものより、モノで動くというほうがイメージ湧きやすいですよね。デザインシンキングの中で軽く製品を作って見せてあげると、そこに対して、またアイデアが湧いてきて、というきっかけになると思うんですよね。そういうことが短いスパンで回すと良いところだと思うんです。



新田:コニカミノルタさんも、マネジメント層の理解が大事ということをおっしゃっていましたが、横断的にいろいろな人たちを巻き込んで、モノのリリースを早く展開していくとなったときに、効果や何か変わったことはありますか?

吉田氏:たとえば不具合修正が早くなったりリリースが早くなることによって、お客様の満足度が高まる。お客様の満足度が高まると事業部長が喜ぶ。そういう事例を丁寧に拾ってアジャイル推進ワーキンググループから社内に発信していき、企業の経営・事業目線で効果があるという発信を、丁寧に怠けずにやる。そのためにトップマネジメント層を巻き込むのは重要ですね。あとは、個人的な所感として、スクラムチームで同じゴールを共有して進めるというスタイルの開発は、メンバーが幸せそうだなと思います。先ほど岡澤さんがおっしゃった、エンジニアがプランナーに物を言える状態って、「エンジニアの奴隷化」という嫌な状態をなくせるというすごく良いことなんじゃないかなと個人的には思っています。

新田:アジャイルというのをこれだけやっていれば、みんなが幸せになれるということなのです。今日お越しの皆さんも、ぜひ実践してほしいと思います。

■組織を認知させて、コミュニケーションの取れる空間に入れて育成する

新田:それでは最後のテーマになります。いま、どういう形でアジャイルを立ち上げてきたかというお話をしてきましたが、もうひとつ組織づくりの中で採用も重要になります。特に開発に関わるメンバーや、最近ではDX人財と言われますが、そういった方々をどのように社内で採用し、育成していくか。こちらに関して、吉田さんに簡単にご説明していただきます。

吉田氏:ギブリーさんにご協力いただいて、学生対象のハッカソンを始めたんです。



「あなたたちみたいな人に来てほしいんですよ」というメッセージの発信を、まずは心掛けました。1回目のハッカソンのときに「コニカミノルタという会社についてどのくらい知っていますか」という項目を、アンケートに入れたんです。参加者の約3割が「このハッカソンの案内で、社名を初めて知りました」という回答で、弊社の人事は大ショックを受けて(笑)。そういうところからのスタートでした。まずは認知・認識してほしいし、その上でなんか面白そうな会社だなと思ってもらったら、ぜひ入社していただきたいと思ってもらいたいという思いでやってきた活動です。

ただ、そういうふうに聞くと誰でも参加できるというようなイメージになるかもしれないんですが、実はけっこう厳しめのハッカソン設計になっています。まず事前審査があり、必ずしも応募者全員が参加できるわけではない。個人エントリーの場合は初対面の人といきなりチームを組むことになりますし、テーマも当日まで発表されないんです。テーマ発表がなされたと思ったら、そこから成果プレゼンまで24時間しか残っていないのに、ハッカソンなので最後はちゃんと動くものを作ってねという有形無形のプレッシャーの中で行われるハッカソンです。



参加した学生さんに「これ考えた人はドSですよね」って言われたりとか…考えたの私なんだけど(笑)。この取り組みは2017年からやっているんですが、結果として2年続けて全部のチームが何かしら動作するものを作り上げることができました。これはギブリーさんの多大なるサポートによるものだと思います。審査員には外部の方もお招きし、メンターとして社内のエンジニアに多く入ってもらい、とても楽しいお祭りになっています。

認知してもらうというのは本当に最初のステップなんですが、こういった取り組みを通じてこの会社は面白いなと思ってもらい、実際に一緒に働く仲間として来てくれるに至るためには、いままでどおりの採用プロセスではダメだとも思っています。新卒採用のプロセスを、やはり変えていかないといけない。日本の企業の大半が行っているメンバーシップ型採用というのは、良い面悪い面両方あるものの、どちらかというと弊害面として、本人がやりたいと思っていた職種に就けないという課題は大きいですね。

新田:新卒学生は「配属ガチャ」という言葉を使ったりしていますね(笑)。

吉田氏:まさに配属ガチャですよね、本当にそうだと思います。特に新卒採用においては、本当に大きな課題だと思います。そこで、選考に関しては通常より厳しめの条件を要求しますが、そのかわり入社後の配属先の職種は約束するという採用プロセスを一部導入しました。

我々が求める人材像というものも定義しており、単に知識や技術がありますという人では不十分です。自分の技術力を自発的に磨いてきた経験があるとか、発信してきた経験があるとかを問うため、2019年度採用の時に新しく作った「ICTコース」(注:2020年度採用ではコースの名称が変更される可能性あり)では、エントリーシート項目の中に「大学のカリキュラム以外で、自分の技術を磨く経験を何かしてきましたか?」という質問を入れています。ここが書けていないと、それだけで落とすほどの重要項目です。そういった、自発的に行動できる人を我々は求めています、というメッセージです。他にも、ギブリーさんにご協力いただいて、コーディング試験もプロセスに入れました。この2つの関門をクリアして、ようやく面接という流れです。なお、育成に関しては、弊社よりもKDDIさんのほうが面白そうなので、お譲りします(笑)。



新田:一括採用というところから、よりDX人財を、ということですね。そのために社内を巻き込んで、まずは学生に認知啓蒙でそういう人たちに会社を知ってもらう。学生さんたちに、いろいろな企業がある中で、御社でソフトウェア開発ができるんですか、みたいなところから入って、そういう方々を受け入れやすいような成功フローというものをきちんと作っていくということですよね。

今度は育成の話ですが、それでは入社した人たちを、どのように組織にアジャストしていくか。岡澤さんにご説明いただきたいと思います。

岡澤氏:アジャイルの基礎知識的な面でいうと、KDDIはScruminc.と業務提携しており、永和システムマネジメントと共同でスクラムセミナーをやっているんです。また、当初からの開発リーダー層や途中からKDDIにジョインしてくれたメンバーもアジャイルをかなり熟知していて、それで教えていくということをやっています。実際、エンジニアをどうやって育成しているかというと、黙々と作業しているのではなく、ペアプロ、モブプロしながら実施しています。もちろん、基本的な開発知識やプログラミング知識などは研修を実施したり、メンターがフォローしたりもします。

モブプロでは4人ぐらいで一緒のものを作ってみようというのが基本となっています。エンジニアが4人いて、真ん中でドライバーがコードを書いていて、そのまわりにナビゲーター(コードを考える人)がいます。中には初心者の人もいたりするんです。これをやると何が良いかというと、全員で学びを共有しながらアウトプットを共有していけます。

よくアジャイルだと“多能工”という考えを持つのですが、たとえばサービスを提供するには、モバイルアプリも作るし、サーバーも作るし、インフラも作るし、横串でやっと使えるようになるんです。1スプリントでiOSのアプリを作りましたが、サーバーとは繋がりませんでした、では価値がないんです。1スプリントでユーザーに価値あるものを提供するには、チームで全部できなければいけないんです。それができる人材をいかに早く育てていくかを考え、こういうやり方を実施しているチームもあります。いろいろ模索しているところです。

メンバーがインフラ開発して、iOS、Android、サーバーサイド開発ができたりと、ある程度できる状態になっています。そういったチームがフロアに複数チームあります。そういう中に新卒の人が来ると、半年ほど経てば、ある程度コードを書けるようになるんです。そういうのが、この手法の面白いところかなと思っています。

新田:なるほど。つまり従来の縦割りみたいな組織から、ある程度コミュニケーションできて相互に作業できる空間に若手の子たちを混ぜ込んであげて、組織にどんどん落とし込んでいくという感じなんですね。

岡澤氏:コミュニケーションはとても重要だと思います。チームとしては最低でも週に1度、振り返りというのをやるんです。これをやっていくうちにチームの状況も見えます。何より心理的安全性がある環境や雰囲気にしてあげることで、どんどん成長していくし、モチベーションが落ちにくいというのも重要かなと思っています。

新田:アジャイル組織を作る上で、HRという観点からこういう人たちを巻き込んでいくという採用設計と、お話いただいたような空間の中にそういう人たちを巻き込んで入っていくことで、スムーズに組織にアジャストしていくという取り組みをご紹介いただきました。本日はありがとうございました。

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  • Writer
  • AgileHR magazine編集部
  • エンジニアと人事が共に手を取り合ってHRを考える文化を作りたい。その為のきっかけやヒントとなる発信し続けて新しい価値を創出すべく、日々コンテンツづくりに邁進している。

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