2022.03.15

BXT+Agilityを実現する
PwCコンサルティングの内製エンジニアリングチームとは

不確実性の高い時代の課題解決に必要となる、「テクノロジースキル」と「俊敏性を持ったチームづくり」

■Speaker 情報

PwCコンサルティング合同会社
専務執行役 Practice本部長(Service & Platform) パートナー
桂 憲司 氏

PwCコンサルティング合同会社
テクノロジー&デジタルコンサルティング ディレクター
吉田 壮夫 氏

世界156カ国に29万人以上のプロフェッショナルが在籍する世界最大級のコンサルティングファームであるPwC。新たな経営ビジョンとして「The New Equation」を掲げ、多岐にわたる分野の多様な人材がスクラムを組み、持続的な成長と信頼構築を支援しています。

今回お話を伺うのは、日本におけるPwCのメンバーファーム、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)のテクノロジーコンサルティング部門で先端のデジタル技術を融合・活用した課題解決に挑む、Digital Factoryのチームです。戦略策定だけに留まらず、データアナリティクス、AIやXR、サイバーセキュリティといった先端技術のエンジニアサービスの提供までを行う同部門はどのような人材の採用・育成を行っているのでしょうか。

「エンジニアとコンサルタントの垣根のない組織を目指している」というお二方に、その組織ビジョンや、採用・育成に対する考え方や取り組みを伺いました。

■PwCの独自概念「BXT」によって、顧客のビジネス変革を成功させる

- まずは、お二人のご経歴や現在の業務について教えてください。

桂氏:「私は、事業会社を経てコンサルタントとしてのキャリアを開始しました。電機業界、情報通信業界、エンターテインメント業界、メディア業界向けサービスの日本統括を務めた後は、PwCシンガポールへ拠点を移し、その統括としてASEANの5カ国で日系企業の海外進出における支援をし、2018年に帰国してからは、テクノロジーコンサルティング部門のリードをしています。」

吉田氏:「私のキャリアは、2001年に新卒入社したSIerが始まりで、当時はSAPを始めとするERPが日本でも流行し始めた頃であり、SEとしてSAPのアドオン開発やBasis領域を担当しました。その後はコンサルティング会社に転職し、ITコンサルタントとしてIT戦略やIT構想を主に担当しつつ、導入PJTにも関与してきました。PwCコンサルティングには2017年4月に入社し、PwCコンサルティング内にエンジニアチーム立ち上げ、その後はチームマネージメントを担当しています。」

- 世の中には特定の部署で案件を請け負うコンサルティング会社が多い中で、PwCコンサルティングは全部門が共通して「BXT」という考え方を持っていると伺っています。BXTとはどんな概念なのか教えていただけますか。

桂氏:「BXTは『Business eXperience Technology』の略称であり、PwC独自の考え方です。ビジネスとテクノロジーの両軸に、エクスペリエンスという軸を加えています。クライアントのビジネス、顧客や社員の体験、それを可能にするテクノロジーを三位一体にしてコンサルティングを行うのが私たちの方向性です。テクノロジー部門のスタッフがテクノロジーだけを提供するといったような、特別な部門だけがコンサルティングをやるのではなく、どの部門も一緒になってクライアントにエクスペリエンスを届けることを目指しているわけです。」

- 日本においてDXが進み、クライアント企業からはデジタルに関するご相談が増えているのではないかと思います。そんな中で、PwCコンサルティングではどのような社会的立ち位置を目指しているのでしょうか。

桂氏:「DXによってデジタル化が進むと、企業間連携なしでは乗り越えられない壁にぶつかります。基本的に当社1社で何かを完結するのではなく、その先を見据えたコンサルティングを提供したいと考えて、具体的には複数の企業を結んだり産学官連携のための橋渡しをしたりと、マクロな観点からデジタル推進をアプローチしていくことが重要です。例えば、スマートシティなどは1社だけでは実現できません。民間企業や教育・研究機関、政府・地方公共団体などの協業が必要な分野に、当社としては積極的に関わっています。」

- デジタルの加速によってチャンスが広がる一方で、その影響でマーケット自体が世界に広がり、グローバルでの競争力が必要な経営環境へと変化しているそうですね。

桂氏:「クライアントが世界を相手に戦う為には、自社のコンピテンシーだけはなく、外部とのアライアンスありきのデジタル戦略が必要です。私たちが各機関と関わる中で、大学が最先端技術を持っていることもありますが、大学はその技術をどのように応用するのかが見えていない場合もあります。また、ルールメイキングの観点では行政の協力も当然必要です。よって、状況に応じて私たちがハブとなって動いたり、直接ビジネスを創造したりするなどさまざまなケースがあります。」

■BXTの「Technology」を担うエンジニアで構成されたDigital Factoryチーム

- クライアントのデジタル戦略における課題解決に対し、外部連携が必要であれば産官学をつなぐハブとなり、時には直接ビジネスの創造に挑む。これらを、BXTの視点を持ちながら推進されている貴社において、Digital Factoryチームはどのような立ち位置にあるのでしょうか。

吉田氏:「Digital FactoryはBXTのT(Technology)のEnablerの位置づけです。現在のVUCAといわれる不確実性が高く不透明な時代において大切なことは変化に即時に対応していく機敏性(Agility)であり、コンサルティングサービスの在り方も変化していると考えています。具体的には、戦略・構想策定などの早い段階でシステムの試作品をクライアントに見せてイメージを合わせることで、その後のPoCを円滑に進めることができます。PwCではBXTを進化させ、BXTにAgileの要素を加えたBXT Agileの姿勢で、これらを推進しています。」

-システム開発業務については外部委託をする企業様が多い中で、PwCではなぜエンジニアチームの内製化に至ったのでしょうか。立ち上げの背景を詳しく教えてください。

吉田氏:「PwCがエンジニアチームを持つに至った背景は大きく2点あります。1点目は、先ほどのDigital Factoryチームの位置づけの話とも関連しますが、Agilityが求められる今の時代において、変化への対応が発生した際に優秀なエンジニアが素早くPJTに参画できる体制を実現する為です。2点目は、PwCグローバルが保有する中国・インドの大規模なオフショアのエンジニアリソースを最大限活用するためです。彼らと対等な関係を築くためには、外部ではなくPwC Japanグループ内にも優秀なエンジニアが必要という判断で私たちPwCコンサルティング内にチームを立ち上げています。」

■エンジニアとコンサルタントの垣根を壊す育成戦略

- PwCコンサルティングのエンジニアは、「グローバルな視点を持っている」「エンジニア以外にも刺激を与えられる」「フルスタックエンジニア」の3要素をハイバリューとして定義し、社外でも価値が認められるような市場価値の高い人材の育成を目指しているそうです。

吉田氏:「グローバルな視点は、PwC USのテクノロジーラボにいるメンバーと交流することでも身についていくと思いますが、それを日本でどう還元するかを考えられるのがポイントになります。また、当社では産官学の連携を推進していますから、エンジニア以外の方々にも刺激を与えられるような人材育成を目指しています。」

- これからのエンジニアには要件通りに実装するだけでなく、高い技術の専門性を活かした提案力も期待されているそうです。コンサルタントには、どのようなことを期待されてますでしょうか。

桂氏:「エンジニアであれば専門性の高い技術力を持っているわけですから、『こんな世界が作れますよ』とエンジニアの観点でどんどん提案して欲しいですね。一方のコンサルタントは、これまで以上にエンジニアの技術を理解する必要があります。そうすることで、エンジニアとコンサルタントの垣根を低くしていきたい。私はメンバーに、“テクノロジーが世界を変えていく。その技術力を持って先頭に立って欲しい”といつも話しています。」

- さまざまなバックグラウンドを持つスタッフの多様性を活かしつつも、組織全体のテクノロジースキルを底上げする為に、どのような環境を用意されているのでしょうか。

吉田氏:「例えば、法人から補助金をだして、職員がオンラインの講座を受講できるなどといった、自主的に学ぶことを支援するプログラムがあります。コンサルタントもモックアップなどを作れるようにするトレーニングを受講しています。グローバルレベルでは、AIやXRなどの領域にも巨額投資をする方針もあります。また、エンジニアにとって居心地が良く、ストレスのない開発環境作りに力を入れており、思いついたことをすぐに試行できるように意識しています。

他には、グローバルのデリバリーセンターやPwC USのテクノロジーラボとの技術交流や出向もあります。とにかく経験を積むというところへの投資は多いです。グローバル展開は当社としても進めていますので、リモートを活用して海外の案件も行うこともあります。」

■採用したいのは、新しい技術に貪欲でチャレンジングなエンジニア人材

- エンジニア採用を行う上では、スタートアップやベンチャー企業とバッティングすることもあるそうですね。マインド面、テクニカル面でそれぞれどのようなことを求めているのでしょうか。

吉田氏:「マインド面に関しては3点あります。1点目は、初めてのことや難しいことに直面した時に“できません”ではなく、“こうすればできます”“〇〇ということをすればここまではできます”というようなことを考えられるマインドセットを求めています。

2点目が、能動的に動くというマインドになります。ともすればコンサルタントに言われたことをやっていればいいと受け身になる傾向も考えられますが、建設的なディスカッションを行ない、現状をよりよくするために自発的に動けるマインドセットを求めています。

3点目は、初めてのことにもチャレンジできるかどうかです。日本は成功主義といわれていますが、失敗してもそこから学んで再度チャレンジできるマインドセットを求めています。

テクニカル面では、メンバーにはクラウド・Webアプリ開発・スマホアプリ開発・データ可視化に関する基本的なスキルを持った上で自分の深掘りする領域を見つけて得意領域を作ってくださいということと、いわゆる最新技術(Emerging Technology)については各自が興味あるスキルを身につけましょうとの話をしています。別の軸では、圧倒的な技術力でチームを引っ張っていくSME人材も求めています。」

現代における技術は、Webアプリの開発領域を例にとっても、IaaS、PaaS、SaaSと技術の進化によって提供できる範囲が広がっています。ベースの知識を持ちつつ、新たな技術を貪欲に求める人材が必要になるそうです。

- 現在、在籍するメンバーやこれから御社に入社したい方にお伝えしたいことはありますか?

桂氏:「私はよく『とんがって繋がれ』と表現しますが、どんな領域でも構わないので、一人一人がプロフェッショナルとして何かを極めて欲しいと願っています。ただし、それだけだと力が発揮しづらいので、エンジニアの方々もBXTの考えに基づいて、とんがったものを外部にどう伝え、繋げていくかを考えて欲しいです。当社がチャレンジできる世界は、どこのフィールドでも勝負ができるほど限りなく広いです。 また、私たちの仕事は答えのない世界に答えを作ることだと思います。新しい未来を作ることに貪欲なエンジニアの方にぜひ参加してほしいですね。」

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  • Writer
  • AgileHR magazine編集部
  • エンジニアと人事が共に手を取り合ってHRを考える文化を作りたい。その為のきっかけやヒントとなる発信し続けて新しい価値を創出すべく、日々コンテンツづくりに邁進している。

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