2021.11.15

【後半】大手メーカー・SIerが取り組む先端IT人材の新卒採用戦略

〜求める人材に出会える採用手法から、現場を巻き込む採用体制づくりまで〜

■Speaker 情報

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
人事部 採用育成センター
理系職採用 リーダー
延谷 直哉 氏

コニカミノルタ株式会社
人事部
人財採用グループリーダー
築澤 孝治 氏

日本ユニシス株式会社
人事部 採用マネジメント室
新卒採用チーム リーダー
田村 日和 氏

■Moderator 情報

株式会社POLプロフェッショナルサービス部
責任者
山永 航太 氏

■イベントレポート概要

DX時代の到来に加え、コロナ禍により新卒採用のあり方が大きく変化しています。自社のDX推進を牽引できる先端IT人材を獲得するために、大手企業ではどのような採用手法を導入しているのでしょうか。今回は、「大手メーカー・SIerが取り組む先端IT人材の新卒採用戦略」をテーマに、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の延谷直哉氏、コニカミノルタ株式会社の築澤孝治氏、日本ユニシス株式会社の田村日和氏をお招きし、技術系のトップ人材の採用フローや今後の採用戦略などについて、トークセッション形式でお話しいただきました。

今回は、後半部分をお伝えいたします。

■LabBaseやtrackを活用し、欲しい人材にフォーカスする

山永氏:次に、どういった採用手法を導入されているのか、LabBaseをうまくご活用いただいている田村様からお聞かせください。

田村氏:ダイレクトリクルーティングが中心です。LabBaseは、andでもorでも検索条件を設定でき、保存もできるので、例えばハッカソンはこういう方をお呼びしよう、AIエンジニアってこういう方だよね、と人材を定義してスクリーニングをかけていきます。プロフィールをPDFで出すこともできるので、現場の方に見ていただいて、「Aさんがすごく良かったよ」といった評価をヒヤリングするんです。すると私たちも「現場から見るとこういう方がスキルプラスαの評価をされているのか」と分かります。

スキルや研究内容はプロフィールを見ていただかないことには伝わらないので、現場を巻き込みながら、私たちもAIのように学習して(笑)、「この方は現場の受けがいいな」とアタリをつけ、どんどん精度を上げていっています。

山永氏:なるほど。最近では、「優秀層を採用する場合、現場が追いついていかない可能性もあるのではないか」という声も多く聞かれますが、日本ユニシス様では初期段階から現場の方と求める人材のすり合わせをしているのですね。やはり現場の巻き込みは大切ですよね。
築澤様はいかがでしょうか。

築澤氏:元々のスタートはハッカソンです。実は、当社がフォト事業をやめた直後から、学生の認知度が一気に下がってしまいました。その中で、当社に全く興味のない優秀なITの人材を採用するには通常の手法ではだめだろう、何か学生の目を引く企画を立ち上げるしかないなということで、中途採用で入社した方々とディスカッションをした結果、ハッカソンに行きつきました。母集団形成も色々考えた上でギブリーさんにお願いしたのですが、最初はギブリーさんにおんぶに抱っこでしたね。

ナビサイトでは求める人材は来ないだろうと考え、初回はいったん割り切って、まずはブランドの認知度を向上させることを目的にしました。目標は、3〜4年ハッカソンを実施する中で内定受諾につなげること。経営陣に打診する際にも、これで何人採れるんだ、という話が出ると想定し、「そういうものではなく、長期的なスパンで」という絵をあらかじめ描いておきました。

山永氏:社内からは投資対効果を求められると思うのですが、どういった説明をしてどういう形で予算を取っていったのですか?

築澤氏:ハッカソンに関しては採用戦略上の施策なので、採用イベント用の費用をハッカソンにあてました。効果確認では、イベントがSNSに掲載され拡散されていくところも狙っていきましたね。

山永氏:例えば「コニカミノルタ社でのハッカソンで優勝した」などと履歴書に書いていただければ成功、ということですね。延谷様はいかがですか?

延谷氏:今日ご参加いただいているみなさんも、コロナ禍の影響により採用手法を変えられていると思います。私の場合は、コロナ禍で変わらないといけない状況になった際に、これまでのやり方を変えるチャンスだと思って、既存の手法をかなり変えました。まず、「集める」「選抜する」「獲得する」という3つのフェーズの中で、「集める」部分ではもともとLabBaseを使っていて、オンラインでやりとりができるため、オンラインがメインとなる採用活動では必須のツールになっています。また、最近はオンラインでのイベントがメインとなったことで、当社の関連会社や富士フイルムとの連携がしやすくなったため、連携をして実施するイベントを多く企画しました。「選抜する」の部分では、採用でもインターンでも対面が難しい状況なので、候補者の方のスキルや得意/不得意を正しく理解することが難しいと感じていたので、今こそオンラインで受検ができるスキルテスト(track)を導入するべきだ、と上司を説得して選考プロセスにとねじ込みましたね。変化に対していち早く判断をする必要があるので、必要と思う施策を企画してガンガン提案していってます(笑)

今年からは、入社前だけではなく入社後もtrackのスコアを活用できるよう、配属後の教育にtrack TRAININGも導入し、新卒採用と入社後教育を繋げる取り組みも始めています。更に、23卒からはオンラインスキルテストに関連させてathleticsも導入しました(笑)。これまでは部分最適でバラバラなものを使うと運用面で連携がとりづらかったのですが、コロナ禍を期に一気通貫で運用できる仕組みを入れることができました。コロナ禍の環境変化で「変えないといけない」ではなく、「変えるチャンス」だと捉えて動いたからこそ達成できたことだと思います。
※「track TRAINING」:学習習熟度がチェックできるエンジニア育成特化のeラーニング
※「athletics」:株式会社ギブリーが提供する即戦力エンジニア採用サービス

山永氏:ここは今からでも全然遅くないと思いますね。採用における課題は、「社内の制度が整ってないから採用はまだやらない方がいいんじゃないか」「採用ツールを入れたところで社内で使えない」と立ち止まってしまうところにありますが、私たちとしては一緒に成果を作りたいと思っています。この一歩が社内を変えていくはずです。

延谷氏:そうですね。成果が出るかを確かめているうちに、採用市場の競争の中で後れを取ってしまったり、タイミングを逃してしまうことにもなると思います。唯一無二の正解がない世界だと思っているので、狙いと手法が大きくずれていない確信が持てれば、あとは結果は自ずと出てくる、むしろ結果を出してやるくらいの気持ちで、スモールスタートでもとにかくやっていく考え方の方が、うまく進むこともあるのではないでしょうか。

山永氏:ちなみに皆さんは高度IT人材の採用にナビサイトをほとんど使われてないような印象を受けたのですが、ダイレクトリクルーティング以外で活用されている手法はありますか?

延谷氏:ナビサイトは、多くの方に効率よくリーチできる良さはあるのですが、誰に何がどれくらい刺さっているかトレースしづらい点が課題となります。ただ、マス採用の場合はダイレクトリクルーティングでは数多くアプローチすると時間が多くかかるので、各種マス媒体は欠かせません。HPに掲載するだけではなく、YouTubeを活用した媒体なども使っていますね。ただ、そこから高度ICT人材に対してどの程度アトラクトできているのかは分からないので、要件がはっきりしている場合はダイレクトリクルーティングをメインにしています。

■社内の技術者を巻き込む組織体制づくりと、現場へのインセンティブを考慮

山永氏:ダイレクトリクルーティングもtrackも、人事だけで進めていくには限界があるのではないかと思います。特に技術が高度になるほど、その技術のことを全て理解して対応することは難しくなります。先ほど築澤様は、現場の方とも協力してハッカソンをスタートさせたとおっしゃいましたが、この1〜2年、現場の方との関わりで工夫されてきたことはありますか?

築澤氏:最初は、イベントやインターン、ハッカソンへの参加を個々にお願いしていたのですが、それでは効率的に協力してもらうことができません。ですから、このイベントの登壇は役員で、採用面接は部長で、ハッカソンはマネージャーと若手で、と役割を分けてチーム編成をしています。その中でもお願いする社員を採用グループで指名しています。社員も2回、3回と経験を積んでもらえば慣れていくので、レベルアップしていって、採用を含めた部署とのリクルーティングチームという形で動いていますね。そこまでいかないと難しいのではないかと思います。

山永氏:現場から「ちょっと忙しくて」というような反応はありませんか?

築澤氏:人数をある程度増やして、出来る限り個に集中しないように気をつけています。このバランスが難しかったのですが、オンラインになって楽になりましたね。当社は全国に技術者がいるので、東京だけでなく、各地の人材をうまくメンバーに組み込みながら回しています。

山永氏:それはすごいですね。田村様もハッカソンをされていますが、チーム体制や現場の方の協力はいかがですか。

田村氏:助けていただいてありがたいと思う一方で、同時に「忙しい」と断られるケースもあります。部署によってはエバンジェリスト的な活動が組織のミッションに入っているので、そういう部署はお声がけしやすいですね。

工夫したところでは、昨年採用した優秀な人材をロールモデルとして広告塔にしたところです。例えば採用のデータを見せる時に、去年はこんな方が内定されました、とお伝えすると反応がいいんですよ。それなら自分たちも、と手を上げてくださるようになって、今年はオファーが多かったです。現場にインセンティブがあることと、実際に優秀な人材が入るという期待を現場の方に抱いてもらうことが大事なのかなと思っています。

山永氏:まさにアジャイルHRですね。現場の方にご協力いただきながら成果を残し、さらにその巻き込みの輪を広げているということですね。延谷様はいかがですか?

延谷氏:お二人の話と重複しますが、テイクばかりではなくギブも必要だという考えの元、現場の方々の採用への貢献を、評価に反映できる体制へと変えています。もう一つは、協力してくれた現場に、求めている人材や採用活動でケアしてもらった人材をちゃんとその現場に配属して採用活動のメリットを感じてもらうこともできる限り実現するようにしています。そうすると、また次年度のイベントも担当していただけて、良いサイクルが回り始めます。地味な活動ですが、現場と一緒にスクラムを組んでやっていくことが大切だと思いますね。これは一朝一夕にはいかないので、これからも実績を積み重ねていきたいです。

山永氏:現場の方々に対するギブは非常に重要ですね。田村様や築澤様は、現場の方を巻き込むときに意識していることはありますか?

築澤氏:良い活動してくれた方には必ず上司にフィードバックしています。動いてくれた部署に対して確実に優秀な人材を配属する点ではお二人と同じです。

田村氏:インターンシップなどのイベントを実施する際は、若手の方を中心にお声がけするようにしています。インターンシップのメンターやイベントへの登壇など、フロントに立つことで刺激を受け、得られる気づきもあるからです。メンターの中には「呼んでいただいてありがとうございます」と感謝してくれる方もいますね。

■他社とのコラボレーションで23卒採用を変えていく

山永氏:では最後に、23卒の採用戦略のポイントについてメッセージングも兼ねて、本日ご参加いただいている方々にお伝えいただけますでしょうか。

延谷氏:本日ご参加のみなさまも、おそらく悩みながら新しい採用の形を考えられていると思います。私も不安がありましたが、やってみて成果を上げていく、ダメなら分析してまたやり方を変えていくという覚悟で取り組んできました。今後は、自社イベントやダイレクトリクルーティングで現場を巻き込んでいくことを強化していこうと思います。もう1つは他社とのコラボレーションですね。今日登壇されている皆さんとも、参加されている方とも一緒に活動できることが多くあると思っています。就活生の方にとっても、個社ごとのセミナーよりも比較検討しやすく、学生の理解も進んでいくと思っています。面白い採用活動がしたいと考えていますので、是非当社の採用メンバーにお気軽にお声がけください。

築澤氏:優秀な学生に早期に出会い、見極めていくことが重要だと思います。そのためには双方のコミュニケーションが取れるインターンシップが大事。23卒はここをしっかり考えてやっていこうと思っています。我々も手探りで取り組んでいますが、何かを一度やってみれば必ず前進しますし、2〜3年と長期的に続けることで見えてくるものがあると実感しています。ぜひ新たな施策にもトライしていただきたいと思います。
最後に、1社だけではなかなかできないことも、複数の会社が力を合わせればいろんなことを変えられると思っています。富士フイルムビジネスイノベーション様は事業では競合ですが、ぜひご一緒したいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

田村氏:私たちは3年間のリクルーティングストーリーを立てて、「準備・拡散・認知」という3ステップを進めています。前年度は、採用手法を計画して経営陣や社長を巻き込みながら「準備」をすることができました。今年は「拡散」のフェーズに入ります。これまでの実績を、社内そして社外に展開し、「日本ユニシスって、老舗SIerだと思っていたけど、ちょっと攻めたことをやっているな、面白い会社だな」と認知してもらい、素敵な方とご縁が繋がればと思っています。最後に、何かイベントをやるときは我々も一緒に入れてください!

山永氏:「現場を巻き込む」ことに加え、「他社を巻き込む」というのも面白いキーワードですね。弊社やギブリーも一緒に組むことでできることがあると思いますので、もしご興味があればぜひお声がけください。本日はお忙しい中お越しいただきましてありがとうございました。

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  • Writer
  • AgileHR magazine編集部
  • エンジニアと人事が共に手を取り合ってHRを考える文化を作りたい。その為のきっかけやヒントとなる発信し続けて新しい価値を創出すべく、日々コンテンツづくりに邁進している。

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