■Speaker 情報
株式会社ベネッセコーポレーション Digital Innovation Parters DX戦略室 室長 塩野 健一 様 慶應義塾大学経済学部卒。 2008年に株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社し社内SEからキャリアを始める。 2014年テンプグループ(現パーソルグループ)との統合を機にホールディングスへ転籍し、「パーソル」へのブランド変革期に経営企画やブランドコミュニケーション、新規事業立ち上げなどを経験。 その後教育系ベンチャー企業で事業責任者を務めたのち、2022年株式会社ベネッセコーポレーションに入社。現在はベネッセグループ全体のDX推進部門にて戦略立案、推進を担当。 株式会社ゆめみ 代表取締役 片岡 俊行 様 2000年1月、株式会社ゆめみ設立。1000万人規模のモバイルコミュニティ・モバイルECサービスを成功させる。 また、大手企業向けのデジタルマーケティングの立ち上げ支援を行い、共創型で関わったサービスの規模は5000万人規模を誇り、デジタル変革(DX)支援を行うリーディングカンパニーとしてゆめみグループを成長させた。 株式会社ギブリー 取締役 兼 Trackプロダクトオーナー 新田 章太 2012年3月に筑波大学理工学群社会工学類経営工学専攻卒業。 学生インターンシップ時代に「エンジニア」領域に特化した支援事業を株式会社ギブリーにて立ち上げ、入社。 現在は取締役を務める。オンラインプログラミング学習・試験ツール等の自社サービスを立ち上げ、同社のHR tech部門を管掌。 また、日本最大規模の学生ハックイベント、JPHACKSの組織委員会幹事を務めるなど、若い世代のイノベーターの発掘・支援にも取り組んでいる。■イベント概要
テクノロジーが働き方を変え、企業のDX推進に必要なスキルも変わりつつあります。この変化を理解し、適切な人材育成と採用計画を立てることが強固なデジタル組織を作るための鍵となります。本イベントでは、デジタルイノベーションパートナーを設立し、デジタル人材育成に取り組む「ベネッセコーポレーション」と、職位ガイドラインを用いてキャリアパス構築を支援する「ゆめみ」が、スキルギャップの可視化から始めるデジタル組織の強化方法について語ります。DX推進やデジタル組織推進に関心がある方、エンジニアのスキルギャップを可視化したい方にお役立ていただけるイベントのレポート記事です。■DX推進における組織づくりとスキル定義の重要性
新田:まず初めに、オープニングトークとして業界全体のDX人材に関する課題と、強い組織づくりを行うためにスキルマップがなぜ重要なのかというお話をします。 本日の講演を視聴されている皆様は企業のDX推進をミッションとされている方が多いかと思います。しかし、情報処理推進機構が発行する「DX白書」では、DX推進に必要な人材は、量も質も足りていないというデータがあります。日本の企業で行われる人材不足を補うための取り組みとして最も多いのが、社内の人材育成。既存の人材の活用だけでなく、外部の人材採用にも注力している状況です。 しかし、DX推進に必要な人物像を定義できていないと、どのような人材を採用すべきか、育てるべきかがわからないという問題が起こります。この点については、米国と比較しても日本が遅れているという状況です。また、スキルを評価基準として定めることも重要ですが、約90%以上の企業がその設定ができていません。 この状況を打破すべく、経済産業省ではビジネスパーソンやDX推進人材に求められるリテラシーやスキルを定義するデジタルスキル標準を定めています。これを組織のDXビジョンや経営ビジョンに必要な人材要件を明確化する基準としてご活用いただきたいと思っています。 そして、その基準化をした上で、人材の確保や育成施策を行うべきです。「DX組織を内製化し強い組織を作るための第一歩は、人材の要件を明確にすることである」という点が少しでも伝わっておりましたら幸いです。 以上が、私の背景説明となります。■ベネッセの取り組み:スキルマップでDX人材を育成
新田:次に、具体的な事例をベネッセコーポレーション様からお話いただきます。塩野氏:はい、ベネッセコーポレーションの塩野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。ベネッセは子供向け教材の企業として知られていますが、実は介護施設の運営や社会人向けの学習プラットフォームにも取り組んでいます。2021年にはデジタルイノベーションパートナーズ(DIP)という組織を設立し、現在約800名の規模に成長しました。 DIPの設立背景には、ベネッセの各サービスが縦割り組織で運営されていたこと、少子高齢化による人口動態の変化、そして生活のデジタルシフトといった要因がありました。特に、子供たちの学習環境がデジタル化していく中で、ベネッセもそれに対応する必要がありました。 そこで、デジタルの専門人材を中央集権化し、DIPを設立しました。DIPはベネッセのDXを強力に推進する役割を果たしています。 今年の5月には、人口動態の変化に対応するため、ベネッセの利益構造を変更する中期経営計画を発表しました。その中で、DIPの存在がさらに重要になっていると感じています。 現在、DIPでは2つの大きな目標を掲げています。1つ目は「各事業フェーズに合わせたDXの推進」、2つ目は「組織全体におけるDX能力の向上」です。本日は、「組織づくり」がテーマですので、組織のDX能力のなかでも特に人材に焦点を当てて話を進めます。 人材開発における課題の一つ目が、縦割りの組織体制です。縦割りの組織では、どの部署にどのレベルのデジタル人材がいるのか把握するのが難しいです。そこで、まず人材開発方針を設定し、どの部署にどのレベルの人材が必要で、現状どの程度満たされているのかを明らかにしました。
さらに、不足する部分を補うための研修制度も設けました。我々のサービスを成長させるためには、事業理解が深い人材にデジタル知識を付けてもらうことが重要だと考えています。
そのため、次のような具体的なアクションを実行しています。まず、職種の定義です。我々は7職種、12区分に分けて職種を定義しています。これは、デジタルスキル標準を参考にし、社内のデジタル人材に合わせて作成しました。 例えば、「ビジネスアーキテクト」という職種は、私たちの社内ではプロダクトマネージャーやBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)などに相当します。しかし、担当者や必要なスキルセットは異なるため、職種をさらに細かく分けました。
次に、スキルマップの作成についてお話しします。各区分ごとにスキルマップを作成しました。これは、デジタルスキル標準を原案にし、区分ごとの第一人者にヒアリングを行って作成しました。 例えば、プロダクトマネージャーの場合、UX設計、プロジェクトマネージメント、エンジニアリングなどの専門性が必要です。それぞれの項目について、ベネッセでの業務を進める上で必要なレベル感や観点を明確にしました。このスキルマップは、毎年最低1回は見直すようにしています。
スキルマップが完成すると、社内のデジタル人材がどの職種に属し、どのレベルにあるのかを評価します。これは、アセスメントツールを使った評価と情緒の評価を組み合わせて行います。それにより、各部署に何人のデジタル人材を配置できているのかを明確にします。 また、各事業部ごとのデジタル人材の必要人数と現状の配置人数のギャップを把握します。このデータを基に、年に一回アップデートを行い、そのギャップを埋めるための開発戦略を立てています。