2018.07.24

"採るべきエンジニアを獲得する
ソフトバンク社の採⽤フローを公開!"

「マス向け」と「個人向け」の
両方へのアプローチで
「攻めの採用」を実現する
【AgileHR day #Sprint01】

■Speaker情報

ソフトバンク株式会社
人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用推進1課
小山 亮 様

2012年にソフトバンクに入社後、中途採用担当として1000名を超える採用を経験。2014年より新卒採用にメインミッションを移し、ユニバーサル採用のもと、No.1採用、採用直結インターン、地方創生インターンなど、ソフトバンク独自の採用活動に取組んでいる。

株式会社ギブリー
執行役員
山根 淳平

2012年より株式会社ギブリーに参画、エンジニア向けHRテクノロジー事業の立ち上げを行う。ハッカソンやアイデアソン、プログラミングコンテストなど新しいエンジニア採用施策を取り入れ、年間500社以上のIT・通信・メーカー企業のエンジニア採用・育成を支援。2017年に同社の執行役員に就任。

■イベントレポート概要

2018年5月29日、株式会社ギブリー主催による「AgileHR day」の第一回が開催されました。
「AgileHR day」とは
近年、新しいテクノロジーの活用によって、HR業界も取り入れるべき戦略や手法を、外部環境や時代に合わせて変えていく必要に迫られています。そこで各企業のノウハウを共有し、よりHRの生産性や効率を高めていくことを目的としたトークイベントです。

今回は、数多くの企業が注力するエンジニアの採用について、ソフトバンク株式会社採用担当の小山氏とギブリーの山根淳平の2名が登壇し、採用の戦略設計からフローまで幅広いテーマでトークセッションを中心に、小山氏よりソフトバンク社の事業内容や今後のビジョンとともに、2019卒エンジニア採用の戦略やフロー、HR Techの活用方法を含めた同社の採用プロセスについてお話しいただきました。

■AgileHRとは?

現在、エンジニア採用のトレンドは大きく変化しています。就職や転職のチャネルはナビサイトや転職サービス以外にも、ダイレクトソーシングやリファラル採用など多様化が進んでいます。
オープニングではギブリー山根が「エンジニア採用は事業戦略に紐づくもの」という前提を再確認するとともに「技術のトレンドや事業の変化によってHR自体も俊敏に変えていく必要がある」というAgileHRの概念を説明しました。



山根 :「採用の変化や技術のトレンドの変化から採用担当の方もキャッチアップする情報がこれまで以上に増えてきており、一年という期間でも状況は大きく変わります。例えば競合が新しい採用手法を始めて、自社が採りたかった人材をごっそり持っていってしまったりとか、新しい技術が自社の中で古くなってしまい求職者に対しての魅力付けが弱くなってしまったりとか、そういった技術トレンドや事業の変化によってHR自体も変えていく必要があり、既存の手法にとらわれず、走りながら変化してHRを促進させていくことが“AgileHR”だと考えています。

■変化を続けるソフトバンクの事業と採用ポリシー

ソフトバンクの小山氏に企業理念やミッション、事業の変化に基づくソフトバンクの採用戦略についてお話しいただきました。

小山氏 :ソフトバンクは通信キャリアの会社というイメージが強いが、我々はインターネットカンパニーだと考えています。中核の事業内容を時代によって変化させているソフトバンクグループは、現在AI、スマートロボット、IoTなど最新テクノロジー事業に注力しています。また、人事戦略においては新規事業の創出と既存事業の活性化に同時に取り組むため、テクノロジーを活用した効率化を推進していて、業務工数とコストを半分に、生産性を2倍にするという“Half & Twice”を目標に掲げ、働き方改革にもICTを積極的に活用しています。選考フローにおいてもエントリーシートのAIによるスクリーニングや、LINEのチャットボットによる問い合わせの一次対応を導入することで選考工数の大幅な削減を実現しています

山根 :事業を変化させていく御社にとって、採用におけるミッションってどのようなことでしょうか?

小山氏 :人事の普遍的なミッションは人と事業を繋ぐことです。これは当社の人事に一貫して伝えられているメッセージです。人事が事業の成長を妨げてはいけない、むしろ加速させるような取り組みをしていくことが重要です。それを踏まえ採用のミッションは何かというと、事業の加速に対して採用から貢献するということだと考えています


また、採用ポリシーについても触れ、新卒一括採用や大量の母集団からの選抜といった従来の枠に捉われない試みを他社に先駆けて実施していることもお話しいただきました。


小山氏 :弊社の採用のポリシーとしてはユニバーサル採用を掲げておりまして、入社時30歳未満の方は新卒学生と同様の採用基準で機会を提供するとともに、通年の採用で門戸を開いています。これまでは、専門の媒体を使い、大量に母集団形成をして、優秀層を選抜していく採用でしたが、これには集客の工数や予算がかかり過ぎてしまうという課題がありました。また、弊社に興味をもってもらえていない対象へアプローチすることも課題のひとつでした。そこで現在は、自分たちで取りに行く1to1採用にも注力しています

■「マス向け」と「攻め」のアプローチの両立

3万人もの応募者に対する「マス向け」のアプローチから1to1の「攻め」の採用にシフトしつつあるが、最初から攻めの採用にシフトしたのではなく、様々な施策を並行で行いながらマス向けと攻めの採用を両立してきたソフトバンクの新卒採用。

山根 :マス向けを行いながら個人個人に対する採用活動を両立して行うのは難しいのでは?

小山氏 :僕が新卒採用に関わりだした当時は、会社のブランドもあるため、毎年一定数の学生からのエントリーは来ていましたが、本当に採用したいという層が途中で離脱してしまっていたり、そもそもエントリーしてくれていないのではないか、という課題意識を持っていました。母集団を集める中でも、一定の質が担保できるようになってきたので、さらにドライブをかける意味で最終的には採用プロセスを2つの方向に分けて取り組むようになりました。そのため、初めから1to1にいきなりシフトしたというわけではなく、徐々に変えていったんですよね。


従来のマス向けアプローチを効率化しながら工数を減らし、かつ優秀な候補者はピンポイントで採りにいく体制を切り分けて作ってきたソフトバンク。施策の開始から2年目で、接点を持った段階では自社に興味を持っていなかった優秀な学生も最終的に入社に繋げるに至ったとのこと。
また「攻め」採用へのシフトは会社として意思をもって決断したと語る小山氏。


小山氏 :なんだかんだ言っても大手メディア経由の応募が多いんじゃないかっていう仮説もあったので、いきなり振り切るのは抵抗もあったのですが、意思をもってメディアへの掲載量を大幅に削減しました。でも結果的に総エントリー数は約9割担保されてます。トレンドが変わってきているとこに対して、アクションを起こせるかどうかが重要だと思いますね

■求められるエンジニア像の変化

携帯、通信キャリアとしての事業が中心だったソフトバンクでは、これまでネットワークエンジニアやインフラエンジニアを中心に採用してきました。しかし、この2年ほどの間に事業内容がAI、ロボット、IoTの領域にシフトしていくことで、求められるエンジニア像が大きく変わってきたといいます。

山根 :新規事業をやる上で、新しい技術者が必要になってきてると思いますが、採用はどのように変化してきていますか?

小山氏 :今まではSIerの会社が採用するようなネットワークやサーバー、インフラ寄りのエンジニアが中心でした。そういうエンジニアは今も必要ではありますが、これからは自分たちでものづくりができる、コードが書けるエンジニアを採用する方針に注力して来ています。事業がIoTとかAI、ロボットにシフトしていくので、そこで技術を活用できる人を増やさなくてはいけないという危機意識ですね。ここ2、3年で採用対象や比率も大きく変わりました。事業の変化に伴って採用する人を変えるのは当たり前なのかもしれないですね。今まではエンジニア採用を、単にエンジニア職として集めてきていたのですが、実際にはインフラやネットワーク系のエンジニアもいれば、Web系のエンジニアもいて、千差万別なわけですよね。これを全部分けて採用活動していくのが理想ですが、模索しながら良い手法を探しています

山根 :エントリー時のスキルによって配属先を想定して採用するか?

小山氏 :専門性の高い領域は配属先の想定もある程度しますが、今後、主要事業が変わる可能性もあるので、ベースのスキルが高い人を継続的に採用していく重要性もあるんです。一方で、スキルを元にどんな人材ポートフォリオを築くかは難しいところですし、模索しながら進めている状況です

■選考とスキルの見極めはどのように行うのか

ソフトバンクはどのようにエンジニアのスキルの見極めを行なっているのか、小山氏によると、ソフトバンクでは主に4つの採用手法に分けてスキルの見極めを行なっているといいます。

小山氏 :一つコアになっているのがインターンです。今期はインターン経由で約100人採用する予定です。ソフトバンクで実施しているインターンは、2〜4週間くらいで、現場配属型を採用しているので、仕事を通じてスキルの見極めをしています。ここで一定数の採用を担保しています。二つ目は通常のメディアから入ってくる母集団の人たちに関しては、スキルチェックテストでスキルの可視化をし、面接で人物面を見ること。三つ目に関してはスキルがある程度わかった状態で会える逆求人形式のイベントなどを活用しています。最後の四つ目は、自社でハッカソンを2泊3日で実施しており、採用につなげています

■部署により異なるスキルを見極めるには

AIやモバイル、デバイスによって変化するエンジニアの技術。これらをどのように見極めているのかについては、技術部隊との連携が重要と小山氏は述べています。本当に必要な人がどういう人なのか、どういう風に見極めたらいいのかということをエンジニアと人事が協力して考えているといいます。

山根 :スキルの見極めには、エンジニア視点を持った採用責任者は必要だと思うのですが、採用活動で現場のエンジニアに協力を得るために必要なことってなんでしょうか?

小山氏 :やはり、採用に協力することに意味があることをメッセージとし出し続けていくことですね。例えば現場配属型で実施しているインターン経由で入社した社員の能力の高さや、定着率の高さを伝えたり、現場の状況を正しく理解している社員が学生とのコミュニケーションを担うことの重要性を伝えるなどの方法を取っています

■人事と現場エンジニアのあるべき役割

人事と現場のエンジニアが採用活動において効果的に連携しているという事例が取り上げられることは少なく、人事が集めた母集団とエンジニアが求める人材にギャップがあることも。ソフトバンク の人事と現場エンジニアの連携についても伺いました。

山根 :ソフトバンク社では人事と現場エンジニアがどのように連携を取っているのですか?

小山氏 :選考フローの中で、エンジニアは必ず面接に入ります。人事だけで決めることはまずないです。エンジニアはエンジニアが見た方がいいですし、その方が統計的にハイパフォーマー率が高いという結果も出ています。やっぱりエンジニアの社員もいい人材が入ってくるのを歓迎しているので、しっかりと状況を伝えることや、エンジニア自身が魅力付けする重要性を伝えることが重要だと思います。あとは採用に協力的なエンジニアを巻き込んでいく。社内でキーマンを見つけることも大事だと思います。特にマーケットが限られている先端領域のエンジニア採用は、エンジニア自身が出ていかないと採れないということを理解し、協力的になってくれています

■エンジニア選考の設計のポイントとは

エンジニア採用の効果的なフローを設ける場合、エンジニア採用に対して経営層や現場の方の理解が薄かったり、フローを変えることが難しい場合も多くあります。ソフトバンクではどのように選考フローを変えてきたかをお話しいただきました。

小山氏 :選考設計の中に業務理解と動機形成を組み込むことが重要だと思っています。ある程度選考が進んだエンジニア志望の学生と社内のエンジニアだけを集めて企業理解の場としてコミュニケーションの機会を作ることで、選考過程での離脱を減らしたり、志望意欲を上げることにも繋げています。これらを現場を巻き込んでおこなっていくことは重要です。また、選考フローは固めるとイレギュラーをつくりたくないというのが、オペレーションを運用する立場の気持ちですが、そこにある程度柔軟性を持たせておくことがいい人材を採用する上で重要だと思うので、選考フローや期間も対象や状況によって変えたりしています

■ソフトバンクの今後の採用における取り組み

セッションの締めくくりに、小山氏に今後のソフトバンクの採用における取り組みについて伺いました。

小山氏 :まずは新卒の方でも能力に応じて、適した条件を提示する待遇設定をしっかり作っていきたいと考えています。能力ベースでできる人に対価を払うというのはこれまで日本企業では難しかった部分ですが、海外の人材採用などにも必要になりますし、エンジニアは技術で勝負ができる職種ですので日本の新卒にも適応していきたいですね。HR Tech系の新しいサービスがどんどん出てくるのでいろいろと活用していきたいです。特にデータの活用には注力していきたいと思います。感覚的、属人的になりがちな採用を、より可視化、効率化して、採るべき人材の採用を突き詰め続けないといけないと思います

山根 :エントリーした方と社内で活躍する人のデータの紐付けが出来てくると採用に活用できるのでは?

小山氏 :入社後は様々な要因が影響するので一概には言えませんが、まずデータを取り続けることは重要ですね。あとは活用方法を決めてアクションに繋げていきたいです

■ソフトバンクにおけるAgileHRとは

小山氏 :まずやってみることが大事だと思っています。これは会社のカルチャーでもあるんですが、やってみないと何も始まらないですし、やれない理由ってそんなにないと思います。逆にアクションを起こす時に弊害になってることって何かありますか?予算がないなら今まで使っていたところから引っ張るだけですし(笑)とにかくやるということが大切ですね

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  • Writer
  • AgileHR magazine編集部
  • エンジニアと人事が共に手を取り合ってHRを考える文化を作りたい。その為のきっかけやヒントとなる発信し続けて新しい価値を創出すべく、日々コンテンツづくりに邁進している。

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