■Speaker 情報
クックパッド株式会社
広報・人事本部長 兼 エンジニア統括マネージャー
高井 直人(たかい・なおと)様
コニカミノルタ株式会社
IoTサービスプラットフォーム開発統括部 サービス開発部
担当部長
吉田 明子(よしだ・あきこ)様
株式会社Gunosy
執行役員 兼 技術戦略室 VP of Engineering
加藤 慶一(かとう・のりかず)様
■Moderator 情報
株式会社ギブリー
村上 友章(むらかみ・ともあき)
■イベントレポート概要
株式会社ギブリーが主催する「AgileHR day」も今回で8回目を数えます。今回はエンジニア採用における「インターンシップ」の重要性と、その設計について積極的かつ特色豊かなインターンシップを行う3社(クックパッド株式会社、コニカミノルタ株式会社、株式会社Gunosy)のご担当者様をお招きしました。各社が実践するエンジニアのインターンシップについて、その設計ノウハウをLT(ライトニングトーク)で大いに語っていただいた内容をご紹介します。
■コニカミノルタが行うインターンシップは4種類
吉田氏:コニカミノルタの吉田と申します。本日はよろしくお願いします。簡単に自己紹介をしますと、私はIoTサービスプラットフォーム開発統括部というエンジニアの組織におります。私自身はソフトウェア界隈をウロウロしておりまして、スタートアップにいたり、国の研究所にいたり、大手電機メーカーにいたりという変遷を経て、今はコニカミノルタに在籍しています。
弊社のインターンシップ開催ですが、単純に目的は2つです。ひとつは何らかの形で学生に直接見る機会を持ってほしい。より良く弊社を知ってほしいということ。あとはマッチング。インターンできた学生の中で有望な人がいたらコンタクトを続けて、あわよくば採用までつなげたい。毎年、職場の受け入れ型インターンにおいては、おかげさまで一定の応募・採用が発生しています。
弊社のインターンシップは4種類あり、数日の短期職場受け入れ型だったり、最近ではハッカソンやアイデアソンをやってみたり、もう少し長期の月単位での職場受け入れ型のインターンシップも行っています。この4種類のインターンを全社のあちこちで開催しています。
それぞれについて、もう少し詳しくご説明しますと、短期職場受け入れ型インターンですが、これは職場ごとに設定しています。日にちや作業内容、どんな人に来てもらうかなど、すべて受け入れの職場が決めてアナウンスを人事に任せるという形です。日数が少ないので、どうしても職場見学という要素が強くなるのが特徴です。これは通年に渡って開催されているもので、だいぶ前から弊社で行なわれているインターンシップ制度です。
次に「コニカミノルタ・ハッカソン」ですが、これは2017年から始めたもので、もともとデジタルトランスフォームを牽引するような人材やソフトウェアエンジニアに対しては、コニカミノルタがアプローチできていない領域の人材なんです。でも、そういう人たちを増やしていかないと、会社がこの先やっていけないという課題感からアプローチしなければならないという問題意識で始めたものです。そういう人材に「あなたたちのような人材を求めています」というメッセージを発信する必要があり、そのうえで学生たちには「なにか面白そうなことをやっている企業だな」と思ってもらって、その中で、お互いに良いなと思う人がいれば採用までつなげていきたい。そういう目的でハッカソンを行っています。
似たような取り組みとして、今年(2019年)から「アイデアソン」というものを始めています。これもハッカソンと同じで、与えられた条件の中で何らかの新しいことを着想できる人を探す目的です。その着想を的確に表現できる人を我々は求めていますというメッセージの発信と、その中で良い人がいたら、ぜひ採用までつなげていきたいという目的はハッカソンと変わりません。
次に、長期の職場受け入れ型インターンシップですが、これは短期職場受け入れ型と設定は非常に似ています。それぞれ受け入れ可能な職場を設定するため、受け入れ職場ごとの事情に寄って開催時期もまちまちだし非常に不定期なものになります。しかも、期間も長いので給料をお支払いして、職場の一員として入ってもらい、機密保持契約も締結するところから始めます。本当に、ひとりの従業員と変わらない状態で実際に仕事をしてもらいます。これは短期の職場見学とは異なり、ガチでお互いのマッチングを図る要素が強くなっています。
■コニカミノルタ・ハッカソンを行う狙いとは?
吉田氏:弊社のインターンシップで特徴的な「コニカミノルタ・ハッカソン」について、もう少し詳しくご説明します。これは、2017年から実施していいます。実は私がコニカミノルタに入社したのが2017年6月で、その前までは別の電機メーカーでソフトウェアの開発部長を務めておりました。製造業の製品の開発部長というのは、他社さんの動向などの情報は半自動的に舞い込んでくるようなポジションなのですが、それでいて、コニカミノルタがソフトウェア開発の人材を求めていることを実は一切知りませんでした。私のアンテナが低いだけかもしれませんが、学生さんはおそらくもっと知らないよねと。そういうところから、このハッカソンは始まっています。
ソフトウェア開発の人材を探していると言っているわりに、学生さんへのアピール方法や採用手法は従来から変えていないのであれば、求めているような人物像の学生は、十中八九コニカミノルタの需要を知らないはずだと。まずは彼らに我々のことを知ってもらうために、彼らのアンテナに引っかかるようなことをやりましょうと、ハッカソンを提案しました。これは私が入社して2週間ほどしか経っていない頃のことで、今考えると、あんまりいろいろ考えずにポロッと言っちゃった感があるのですが、人事部がすごい乗り気になってくれてあれよあれよという間に3ヶ月ほどで実現してしまい、言い出しっぺの私がびっくりするという(笑) このイベントに、ギブリーさんには全面的にご協力をいただき、感謝しています。ふつうの会社は、こんな超絶無茶振りは断るもんだと思うんですけど(笑)、見事に応えていただきました。
ハッカソンには外部の方にも審査に入っていただいたり、けっこう楽しいお祭りになっているかなと思っています。いちばん最初に開催したとき、参加してくれた学生さんたちにアンケートを取ったんです。ソフトウェアエンジニア系の学生たちに「このハッカソンの案内をもらう前に、コニカミノルタという会社をどのくらい知っていましたか?」と問いかけたところ、30%ほどが「社名を知りませんでした」、次の「社名だけは知っていた」を合わせると過半数に上りました。その結果を見て、弊社の人事部は大ショックを受けまして(笑) ただ、これで人事部も目の色が変わったというか、ソフトウェア開発の人材を積極的に採用しようという本気度が高まったのはここからだったなと、今ふりかえると思います。
そんなこんなで始まったハッカソンですが、事後アンケートで「コニカミノルタへの志望度が上がった」というのが40%弱になったり、2018年には学生のほうから「長期インターンシップはありますか。ぜひ、やってみたいんですけど」という問い合わせが来たりと、嬉しい成果が少しずつ現れ始めています。実は、その学生は春休みを利用して、現在、私のチームでインターンとして働いてもらっています。社名も知らない学生が30%というところから始まったわりには、けっこう良い手応えかなと思っています。私からのトークは以上とし、会場の皆さまから、なにかご質問などあればお受けします。
■来場者からの質問
来場者:長期でインターンシップに来られた学生に、業務のどこまでの部分を預けていらっしゃるのでしょうか。
吉田氏:最初は事業向けの開発プロジェクトに放り込みました。そしたら、彼、けっこう仕事が速いんですよね。で、彼自身がちょっとした課題をその中で自ら発見しまして、その解決案ドラフトまで織り込んで提案してきたんですね。そこで(インターンシップの)残りの期間、4週間しかなかったのですが、課題解決のためのソフト制作を指示しました。だいたい、そのぐらいの預けっぷりで働いてもらっています。
来場者:その結果を踏まえて、さらに期間延長をするかどうかのお話もできたりするのでしょうか。
吉田氏:そうですね。そのへんは非常にフレキシブルに考えています。今回は、その学生が春休み期間という制限もあるので、そのまま継続ということにはならないのですが、お互いに非常に好感触ということもあるので、たとえば、次は夏休みにどうですかなどの交渉は十分アリと考えています。
来場者:ハッカソンを開催する前は(ソフトウェアエンジニア志望の学生の)30%も社名すら知らなかったという御社が、そういった学生たちにハッカソンへの参加を呼びかけるために、そんなアプローチをしたのでしょうか。
吉田氏:まず社内の人事部をアテにしない!(笑) 今までアプローチできていなかった未踏領域の人財にアプローチしたいわけなので、社内の人事部が持っているパイプをアテにしてはいけないと。今回の話に関しては、完全にギブリーさんに企画段階から入っていただいて、集客も手伝っていただきました。もともと自力でアプローチできていないのだから、そこはサクッと諦めて、できる人に正しく頼るべきと思いました。
優秀なエンジニア候補の学生たちに、社名すら知られていなかったことにショックを受けたコニカミノルタさん。会社をあげてHRに本気で取り組むようになるのは、あんがいそういった現状認識と吉田様のような一歩引いた目で自社の採用についての現状を俯瞰できる方が必要になるということがよくわかりました。
今回は、貴重なお話をありがとうございました。
連載の第3回目もお楽しみに!