2018.05.15

"LINEも実践するエンジニアの
「スキルマッチファースト」採用 "

"エンジニアの実務に求められる
技術や思考プロセスを見抜くコツとは
【MANABIYA講演録】"

Speaker情報

LINE株式会社 Data Labs/ Clovaセンター Clova開発室 マネージャー
橋本 泰一 様
(写真右)

株式会社ギブリー 取締役
新田 章太
(写真左)

■イベントレポート概要

オンラインでプログラミングスキルチェックを行うサービス「track(トラック)」などを展開するギブリーは、2018年3月24日、東京・千代田区で開催された国内最大級のエンジニア向けの技術祭典「MANABIYA TERATAIL DEVELOPER DAYS」にて、エンジニア採用課題解決についての講演を行いました。壇上にLINE株式会社の橋本泰一氏を迎え、エンジニア新卒採用における同社の取り組みを紹介しました。本記事では、その模様をレポートします。

■エンジニアが主導する採用変革

従来のエンジニア採用では、書類選考、面接を経て技術面接を実施しており、選考が終盤に差し掛かる中で技術のミスマッチが発覚することもありました。そのミスマッチを解消するため、人事ではなくエンジニアが主導で行う「ダイレクトリクルーティング」と呼ばれる選考手法が、特にITベンチャー系企業を中心に増加していると弊社の新田が解説しました。

「ダイレクトリクルーティング」の大きな特徴は、現場のエンジニアが面接の場で直接学生と話をしたり、選考の最初の段階で技術選考を実施するなど、技術面のマッチングを成功させるためにエンジニアが積極的に選考に関わる点です。スキルマッチングを見極めた後に自社の魅力付けの役割を人事が担うケースもあります。

エンジニア採用を成功させるためには従来の「パーソナリティマッチ」よりも「スキルマッチ」をまず考えることの重要性について解説し、スキル判定に伴うエンジニアリソースの工数増加に対してはオンラインツールなどを駆使した効率化が有効であることも取り上げました。
また、少ない母集団を拡大する方法として場所や時間を問わずに参加できるオンラインハッカソンの開催や、採用対象を新卒のみならず大学を卒業した就業未経験者にまで広げて募集する取り組みについても触れました。

■選考参加学生の10%~20%が再受験する、LINE社社独自の技術選考「Re:Challenge」制度とは?

講演の中で、エンジニア採用において数々の新たな取り組みを導入しているLINE株式会社の採用施策を紹介しました。LINEでは選考フローにおいてまず技術選考を行い、エンジニア面接、技術役員の面接を経て内定となる「スキルマッチファースト」の採用を実践しています。技術テストはオンラインにより国内3拠点ですべて同じ内容、同じレベルで実施しているといいます。

LINEが2018卒の新卒採用から取り入れている画期的な試みとして「Re:Challenge」制度があります。技術テストで一度不合格になっても再度の挑戦を認める制度であり、再挑戦を経て内定に至る学生もいるといいます。「Re:Challenge」制度を設立した理由についてLINEの橋本氏は次のように語っています。

「高校受験や大学受験は一発勝負ですが、模試のような疑似体験の機会があります。就活にはそのようなトレーニングが整っておらず、一回の試験で上手く力を発揮できなかった優秀な人材を取り逃がしていることが多いんじゃないかと考えていました。またLINEの選考を受けて不合格になった人の中には『自分の勉強が足りなくて、本当はLINEに入りたかったけど諦めます』という人もいましたが、そういう人たちが半年間勉強したら僕たちが求める人材になって、一年後活躍してくれる可能性もあるわけですよね。そういう人たちを一回のテストだけで判断するのはもったいないと思い、この『Re:Challenge』という仕組みを作りました」(橋本氏)

「エンジニアが就職活動の準備として模試のようにチャレンジできるような場所を目指しているのでしょうか?」という新田からの質問に対し、橋本氏は次のように答えました。

「何度もチャレンジできるので、就活の最初にまずLINEを受けてくれればいいかなと思っています。LINEのテストを通じて、ITやインターネットのサービスを行なっている会社がどういうスキルを求めているのか、何をチェックしているのかを知ってもらい、就活に望んでもらえればいいなと思います」(橋本氏)

「Re:Challenge」制度を活用して同社を再受験する学生は全体の10%〜20%(最近のテストでは再受験率40%)ほど。受験によって自分の不得意な箇所を認識し、次回の挑戦に向けた学習に生かしているといいます。候補者のスクリーニングを行うのみならず学生にエンジニアとしての成長を促し、結果として母集団の量と質を確保することにも繋がる施策であるという印象を受けました。

■実務に求められる技術や、思考プロセスを見抜くための問題の作り方とは?

「Re:Challenge」制度などのLINEの取り組みは画期的なものですが、テスト結果の管理や問題作成の工数など負担も大きくなることが懸念されます。LINEはこの課題を「track(トラック)」(旧:codecheck {コードチェック}) により解決しています。trackはプログラミングテストの作成・配信・受験・採点・評価をワンストップで実現するオンラインツールで、自動採点機能も備えています。
自社オリジナルの問題作成も可能であり、LINEも独自の問題を多数出題しています。
オリジナル問題はどのような方針で作成しているのか、橋本氏は次のように語っています。


「もっとも気に入っているのは暗号の問題なんですけど、問題に提示されている情報だけでは答えが導き出せない。なのである程度予測をしたり決め打ったりしなければならないという問題になっています。答えのない問題に対してどう攻めていくのかというところを見たいなと思って作った問題です。実際のビジネスで開発をやる時には答えはないし、どういう解き方をしてもいい。こうやった方がいいんじゃないかという取り組みを色々考えてトライしていくことが重要なので、チャレンジしていくマインドがあるかということを見ています」(橋本氏)

LINEのオンラインテストではインターネットで情報を検索することも認められており、インターネット上で見つけたソースコードをコピー&ペーストして回答しても問題ないといいます。その理由について橋本氏は次のように述べています。

「今の時代、頭の中の知識だけを元に開発するわけではなく、インターネット上の知識もフル活用して開発していくのが現場で求められていることだと思うので、テストの環境についてもそれに近い状態にしています」(橋本氏)

実務に求められる技術や思考プロセスを選考に落とし込むことでスキルのマッチングを実現する手法は、今後のエンジニア採用における重要な鍵となるのではないでしょうか。

■これからのエンジニア採用に求められることは

最後は、これからのエンジニア新卒採用における企業側の心がけについての話で締めくくられました。橋本氏はなるべく若いうちからエンジニアが実務に取り組むことの重要性を主張。インターンなど若いエンジニアの就業機会をより広げることが重要であると語りました。

新田はギブリーが主催する学生向けハッカソンなどでの経験から、勉強している内容と実務との結び付きがイメージできていない学生がいることを挙げ、それを実現するための場が少ないことを指摘。企業側が学生エンジニアのアウトプットの場を積極的に設けることで、優秀な能力を持った人材の発掘に繋がるのではないかと述べました。

この記事をシェアする

  • Writer
  • AgileHR magazine編集部
  • エンジニアと人事が共に手を取り合ってHRを考える文化を作りたい。その為のきっかけやヒントとなる発信し続けて新しい価値を創出すべく、日々コンテンツづくりに邁進している。

関連記事

AgileHRが開催する
エンジニアHRに特化した
トークイベント

Agile HR

# タグから探す

-