Contents
1 人事担当者に求められるものは幅広い
2 人事担当者からパフォーマンス・コンサルタントへの転身
3 人事部門の在り方そのものを大胆に見直す
4 人の能力側面をいかに定量・可視化するか
4.0.1 関連コンテンツ
2 人事担当者からパフォーマンス・コンサルタントへの転身
3 人事部門の在り方そのものを大胆に見直す
4 人の能力側面をいかに定量・可視化するか
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人事担当者に求められるものは幅広い
「人事の仕事って幅広すぎでしょ…」これは、人事として仕事をされている方のおそらく全員が、日々感じられている(もしくは痛感している)ことだと思います。
ただでさえ幅が広い上に、近年経営者が人事部門へ求めるものは従来型のオペレーション機能の提供だけではなく、「人と組織を使って業績をどう上げていくのか?」というResult-Baseの成果提供へと拡がってきています。
採用ひとつとっても、「最適な人材を、最適なタイミングで、予定以下のコストで採用する」というだけでは不十分で、採用した人材が挙げるパフォーマンス(成果)まで人事の責任領域が広がっていると言えるのではないでしょうか。
人事担当者も業績に紐づくKGIを設定し、業績向上にコミットしていく。
これが今後求められる人事の貢献だと思っています。
ただ、そうなってくると、様々な難しさに直面するはずです。
自社の業績を向上させるためにある課題について考えた時、その原因はそれこそ無限の幅広さに散らばっていて、「採用」「育成」「制度」といった単一の打ち手だけでは解決できないことが殆どです。
この時、人事担当者側が自分の仕事の範囲を「採用」「育成」「制度」のいずれかに限定してしまっていると、「私の手に追える問題ではない…」となってしまいます。
結果として、事業部門からのオーダー対して粛々と採用や研修を提供するだけの、オペレーション人事へ戻ってしまうでしょう。
人事担当者からパフォーマンス・コンサルタントへの転身
このような状況に応える一つのヒントとして、『HPI(Human Performance Improvement)』という考え方があります。これは、事業目標の達成に向けた一連の活動を「パフォーマンス・コンサルティング」と捉え、現状分析~介入策の事項~効果測定までを体系的に進めていくためのプロセスフレームワークです。
1990年代から研究が始まり、米国ATD(Association for Talent Development / 米国人材開発機構)等の団体が現在も研究を重ねています。
HPIのプロセスはとてもシンプルです。
1.あるべき姿と現状の人材の重要な成果とのギャップを発見・分析する
2.成果向上に向けて、そのギャップを埋める効率的かつ倫理的に妥当な施策を立案・実行する
3.成果・業績を測定する
(引用:日本の人事部人事辞典 https://jinjibu.jp/keyword/detl/479/) 次に、HPIを実践する上で押さえておきたいポイントとしては下記の4点が挙げられます。
人事担当者は、強い決意をもって自身のことを「パフォーマンス・コンサルタント」と認識する
「採用」「研修」「OD(Organization Development / 組織開発)」といった従来の人事ソリューションはあくまで介入策の一つでしかない(人の行動や成果に影響する要因は幅広く、スキルフィットした人材を配置する、研修で知識をインプットするだけでは期待する効果は上がらないという前提に立つ)事業部門の問題を一番理解しているのは事業部門の中にいる人間であるという幻想を捨て、事業部門の問題を徹底的に分析するところから始める
KGIを明確に設定する
上記を意識してHPIを実践することが、経営者が人事部門へ求める「人と組織を使って業績をどう上げていくのか?」というResult-Baseの成果を挙げる一つの糸口になるはずです。
人事部門の在り方そのものを大胆に見直す
多くの企業では、人事部門のチームは、「新卒採用」「中途採用」「教育研修」「人事企画」「労務・福利厚生」などの人事機能を分担する形で構成されているかと思います。しかし、このように「採用担当」「研修担当」とその人が提供できるソリューションを限定してしまうことは、HPI実践においては大きな足枷になってしまいます。
人事担当者の一人ひとりがパフォーマンス向上にコミットするコンサルタントであるなら、提供できるソリューションは限定されるべきではありません。
人事のソリューションは一つひとつ専門性が高いため、全方位の知見をもったパフォーマンス・コンサルタントになることは容易ではありませんが、せめて人事担当者は全員がT字型(深い専門性と幅広い知識)のスキルセットを備えるべきです。
では、人事部門はどのような姿であるべきか?
この問いに対する明快な正解はまだ見つかっていませんが、HPIではパフォーマンス・コンサルタントの主要な役割を、以下の4つに分類しています。
アナリスト :ビジネスゴールとパフォーマンスギャップの分析
インターベンションスペシャリスト :ソリューション設計での提言
チェンジマネージャー :ソリューションの展開と実施
エバリュエーター :段階的効果測定とデータ収集
人事部門のチーム編成もこのような課題解決上の役割分担に基づくものにすべきかもしれませんね。
人の能力側面をいかに定量・可視化するか
いずれにしても、最も重要なのは在りたい姿(ToBe)と現状の差分を正しく捉えることです。これが曖昧だと定義した問題そのものが見当違いなものとなってしまいますので、定性的なものではなく何らかの定量的な指標を基準におくべきです。しかし、これもそれほど簡単なことではありません。
特に人事が扱う、人の能力やコンピテンシーを定量・可視化することは非常に難しい。
身体的な能力は計測することはできますが、ビジネスで求められる能力の多くはOutputの量などで代替するしかないものが殆どです。
映画「マネーボール」で広い認知を得たセイバーメトリクス理論はこの問題に対する華麗な解決策と言えるでしょう。
テクノロジーを用いて人のパフォーマンスを可視化する取り組みは実はかなり以前からありました。IBMは1990年頃からテニスの全英オープンのパートナーとして選手のパフォーマンスをリアルタイムでデータ化してファンへ提供していました。
海外サッカーをご覧になる方にはWhoScored(試合中の選手のアクションやポジションをデータ化し自動で採点を行う)もなじみが深いかと思います。
ギブリーが提供するtrackも、プログラミングを中心としたエンジニアスキルを実務と同じ開発環境上で計測し定量化するものです。 人のパフォーマンスを定量・可視化することが秘める応用可能性は無限大です。
採用や評価に用いるだけでなく、HPIのプロセスに組み入れ、成果との因果関係の分析に応用していくことで、真の意味でのパフォーマンス・コンサルティングが実現できるのではないでしょうか。
以上、人事に求められる成果の変化と、その期待への回答の一つとしてHPIをご紹介しました。
まずは、自分自身をパフォーマンス・コンサルタントだと自覚し、事業部門に対してプロジェクトを組むことを打診することから始めてはいかがでしょうか。